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日漢協 ニューズレター 66号

(第22巻 第3号)2006年1月

生薬学教室を訪ねて[37]
天然物生合成機構の解明から、新たな有用物資生産システムの合理的構築へ


東京大学大学院薬学系研究科・薬学部天然物化学教室
(旧生薬学・植物化学教室)  海老塚 豊 教授
明治6年、全寮制として開校

我が国を代表する学問の府としてつとに知られる東京大学は、薬学界においても幾多の業績を残し、明治以来の日本の有機化学の進歩は東京大学の薬学とともにあったとも言われています。

薬学部の歴史は、明治6年(1873)文部省布達により第一大学区医学校に予科2年、本科3年の製薬学科(全寮制)が開校されたのが発端で、近代薬学教育研究の源流ともなっています。

明治10年、東京大学創立に伴い医学部製薬学科と改組、2年制の通学生制度が併設されました。

明治20年に医科大学薬学科となり、同26年講座制定により生薬学、衛生裁判化学、薬化学の三講座制になりました。大正8年(1919)学制改革で医学部薬学科と機構を改めました。昭和24年(1949)新制大学に編成。医学部薬学科から独立し、薬学部が誕生したのは同33年でした。衛生裁判化学、薬化学、生薬学、薬品製造学、生理化学、薬品分析化学、製剤学、薬品作用学の8講座が開設され、翌34年には薬学科に製薬化学科が増設されました。

以後、平成8年(1996)講座制から大講座制に移行するとともに薬学科、製薬化学科を薬学科に統合。大学院においては平成9年から大学院重点化により、分子薬学、機能薬学、生命薬学の3専攻に改組、新たに遺伝学教室、臨床薬学教室を増設、同13年には医薬経済学寄付講座、創薬理論化学寄付講座が開設され、現在に引き継がれています。
自然に対し積極的に働きかける研究

天然物化学教室の前身は明治26年(1893)に下山順一郎教授により開講された薬学第一講座(生薬学)。下山教授は製薬学科の第1回卒業生(明治11年)で、ドイツのストラスブルグ大学において生薬学を学び、我が国伝統の本草学を近代生薬学に体系づけたことでも名を馳せています。

その後、同講座は朝比奈泰彦、藤田直市、浅野三千三、柴田承二、藤田路一、三川潮の各教授が担当。柴田教授の在任中の昭和33年に同学部が設置されたのに伴い、基幹八講座の一つ生薬学講座となりました。同37年には関連講座として植物薬品化学講座が増設され、翌38年には両講座が生薬学・植物化学教室に改称。平成8年の大講座制移行に伴い、分子薬学専攻 生物有機化学大講座・天然物化学教室となり、今日に至っています。


110余年の歴史を有する同教室を平成7年から担当しているのが、薬学部長を兼ねる海老塚豊教授です。現在、取り組んでいる研究課題は、

  • ステロイド、サポニン、フラボノイド、抗生物質など医薬品として重要な天然物の基本炭素骨格形成機構の解明
  • 生合成酵素の発現機構の解明
  • 生合成遺伝子の構造・機能の解析とその人為的改変(生合成工学)による新規有用物質生産系の開発
  • 生合成酵素を標的とする天然生物活性物質の探索
  • 植物の二次代謝と生体防御機構の分子進化

    これらの研究に当たって積極的に取り入れているのは、有機化学だけでなく、生化学や分子生物学的手法です。また、21世紀における独創的な新薬の開発(創薬)を地球環境の保全と有用資源の確保という観点から捉え、「自然の恩恵に依存した活性物質の探索だけでなく、自然に対して積極的に働きかける研究」を天然物研究の在り方の一つと考え、日々研究に勤しんでいます。


    海老塚豊教授(右)と藤井勲助教授