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日漢協 ニューズレター 68号

(第23巻 第2号)2006年9月

巻頭言  漢方薬業界をはじめとする医薬品業界に対する期待

厚生労働省
医政局総務課長
(前経済課長)

二川 一男

我が国の医療用医薬品市場の規模は約7兆円であり、米国に次いで世界2番目(2003年世界シェアの11.3%)の規模です。近年、国内市場における医薬品出荷額の3割以上を外資系企業が占める一方で、我が国の大手企業の海外売上高比率が4割を超えるなど、医薬品産業においてもグローバル化が進み、競争は激しさを増しています。そして、医薬品メーカーには、この激しい競争を勝ち抜くための経営戦略の構築が求められています。

企業規模に目を転じると、日本企業のトップの武田薬品工業であっても、売上規模で世界第14位(2004年で約1兆円)にとどまっています。売上規模の格差は、そのまま投下できる研究開発費の格差に繋がります。 現に日本企業の1社当たりの研究開発費は米国企業の6分の1であり、1社当たりのパイプライン数も、欧米企業が30前後のところが、日本企業は8程度です。

2003年度の医薬品世界売上10億ドル以上の97品目のうち日本オリジンの製品数は13品目(売上ウェイト14.3%)であり、現在は、日本企業は我が国の世界に占める市場シェア以上の薬を開発できていますが、現状の研究開発費やパイプラインの格差をみると、今後日本オリジンの製品は減っていくと危惧しています。

このため、政府はすぐれた新薬に対する薬価上の評価をはじめ治験環境の改善や試験研究に対する支援等を通じて医薬品産業の国際競争力強化に向けた取組を行ってまいりました。

また、本年7月6日に政府・与党一体となって策定した経済成長戦略大綱及びその工程表や、それを踏まえて本年7月7日に閣議決定されたいわゆる「骨太の方針2006」においては、様々な産業の中から特に医薬品産業について、国際競争力の強化を推進すべき産業と位置づけ、必要な支援を行うこととしています。

医薬品産業に期待されることは、患者のために良質な医薬品をより早くより安定的に供給していただくことですが、それには、世界で通用する新薬を生み出す企業が必要です。

売上規模が大きいことは必ずしも良いことばかりではありませんが、新薬の研究開発には一定程度の企業規模は必要となると考えられます。世界15位以下に数十社が併存する日本企業には、より効率的に研究開発をし、コンスタントに新薬を出せるような体制を築くことが求められます。

一方で、新薬をコンスタントに出せない企業は、後発品メーカーに転じ、医療上不可欠な薬を安定的に供給し、我が国の医療に貢献する道があります。医療関係者等から信頼の厚いメーカーのブランドで後発品を上市すれば、医療関係者や患者の後発品に対する信頼は飛躍的に向上すると考えられます。

特許期間中は、研究開発力をつけた新薬メーカーが、自社開発の医薬品販売で利を上げ、それを新たな研究開発に再投資し、特許が切れた後は、後発品が普及し患者負担の軽減が図られ、節約された医療保険財源を新薬の評価に振り向けるという正のスパイラルに入れば、今後進む少子高齢化や生活習慣病の増加に伴う医療費の増大局面に際しても、医薬品産業の成長は期待できると考えられます。

最後に、漢方業界に対する期待ですが、漢方薬は、婦人科医療、アレルギー疾患や高齢者医療などの分野で特に効果を発揮すると承知しており、こうした強みを念頭に置きつつ諸外国にもっと事業展開をして市場を獲得して欲しいと思います。

また、代替医療の世界で、漢方薬をもっと活用するべく漢方薬の有用性を患者や医療関係者等にアピールしていくことが業界にとって極めて重要ではないかと考えています。

今後も漢方業界をはじめとして医薬品産業界の発展に向けて様々なサポートを続けていきますので、漢方業界の皆様方のご理解とご協力を引き続き賜るようお願い申し上げます。