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日漢協 ニューズレター 74号

(第25巻 第2号)2008年9月

日漢協の動き


第59回日本東洋医学会学術総会 市民公開講座から  ストレス社会と漢方
第59回日本東洋医学会学術総会(会頭・荒井啓行東北大学加齢医学研究所教授)の市民公開講座が総会最終日の6月8日(日)午後1時30分より仙台国際センター大ホールで開催された。
本年のテーマは「ストレス社会と漢方」、荒井会頭の開会挨拶に続き、日本薬科大学教授の丁宗鉄先生と日本大学医学部内科学系統合和漢医薬学分野医局長の木下優子先生の師弟コンビによる講演が行われた。時宜に叶ったテーマとあって会場は多くの聴衆で賑わい、二人の講師の話を熱心に聞き入っていた。
(写真上 左から:荒井会頭、丁先生、木下先生)
講演1 医者のいらない暮らしをしよう
講演のトップは師である丁先生。「医者のいらない暮らしをしよう」との漢方ならではの魅力的でユニークな演題を分かりやすく論じ、日本の医療に必要なこと−患者の品格、医者の品格−として、@自己責任の医療(自分の体質を知ろう)A病気にならないようにするB医者を不要とする生活を目指す。以上の3点を指摘、これらのいずれも漢方の考え方であり、漢方は古くて新しい医療であると紹介した。

講演2 漢方でストレスと上手につき合おう
師の後を受けて壇上に上った木下先生はストレスについて、たかがストレス、されどストレスと注意を促し、「不安、緊張、憂鬱、怒り、恨み、寂しさ、悲しみ、嫉み、不快、ひがみなどの心の状態が体に症状を引き起こす」と指摘。ストレスは気=体のエネルギーの流れを悪くする。気と一緒に血や水の流れも悪くなり、さまざまな症状の原因となる。病は気からと訴え、養生が第一で、ストレスをためない、ストレスの原因になるものに近づかない、しっかり体を動かすことが肝要と強調した。講演の後の質問コーナーでは、「漢方と東洋医学の違いは」など、沢山の質問が出され、漢方への期待が少なくないことを伺わせた。


第26回定期総会・講演会から  武田薬品、新たに理事会社に選任
磯部管理官の講演
第26回定期総会・講演会が5月15日、KKRホテルトウキョウで開催され、新たな理事会社として武田薬品工業鰍ェ満場一致で選任された。この審議事項は、第1号議案で審議されたもの。この他に会費算定ルールの改正、会則の改正、新しい委員会組織等に関する提案が審議され、何れも承認された。

総会後に行われた講演会では、厚生労働省保険局医療課の磯部総一郎管理官が「平成20年度薬価制度改革の概要」と題して講演。漢方・生薬の薬価改定等の課題として、特に生薬について市場実勢価格の補足率を高める必要があると指摘。さらに、漢方・生薬の安定供給を図るためどのような対応が考えうるのか。漢方・生薬が実際にどのような患者(疾病、性別、年齢)に使用されているのか、業界でもデータを取っていくべきではないかと提案されるなど、日漢協へ熱いエールが送られた。


第59回日本東洋医学会学術総会で残留農薬に関する日漢協の取り組みを紹介
技術委員会の佐々木博委員長は、第59回日本東洋医学会学術総会(6月、仙台)で講演し、残留農薬に関する日漢協の取り組みを紹介した。有機塩素系農薬のほか有機リン系、ピレスロイド系農薬の残留基準を定めた日漢協の残留農薬自主基準を示すとともに、会員各社で分析された漢方製剤および生薬製剤についての調査結果を基に、すべて基準値以下であったと報告した。

2005〜2006年に残留農薬自主基準を拡充
日漢協は2005年、漢方製剤・生薬製剤・生薬の残留農薬に関する自主基準を拡充し(漢方製剤については有機塩素系・有機リン系・ピレスロイド系農薬、生薬製剤と生薬については有機塩素系農薬)、2006年には生薬製剤の有機リン系・ピレスロイド系農薬の基準を追加した(表1)。

漢方製剤・生薬製剤の残留農薬は基準値以下
自主基準設定後における農薬試験の実施状況を把握するため、2006年に会員会社を対象に調査を行った。その結果、漢方製剤については有機塩素系・有機リン系・ピレスロイド系農薬の残留濃度は、分析された全検体において残留基準以下であった。生薬製剤については、総BHCと総DDTはすべて残留基準以下、有機リン系・ピレスロイド系農薬はすべて漢方製剤の残留基準以下であった。なお、生薬製剤から自主基準対象以外の農薬2種が検出されたが、1日摂取許容量から問題ないと考えられた。

質的・量的両面から原料生薬の安定確保に取り組む
残留農薬問題の根本解決のためには生薬栽培地における農薬使用実態の把握、適切な農薬使用の推進、栽培指導などが必要となる。日本で使用される生薬の約9割(数量ベース)は中国をはじめとする諸外国から輸入されていることから、日漢協は2005年最大の輸入元である中国を訪問し、関係行政機関や関係団体に対し、日本薬局方や日漢協自主基準への理解、農薬使用実態調査協力、適切な農薬使用の推進、安全かつ品質の一定した生薬供給を求めた。
佐々木委員長は「日漢協は、国民の安全意識がいっそう高まる中、残留農薬など品質に関する課題や原料生薬の安定確保、厚生労働省の新医薬品産業ビジョンで提示された課題についての取り組みをさらに強化する」と述べるとともに、「特に原料生薬の安定確保については、質的確保および量的確保の両面が必要であることから中長期的に遂行していきたい」と今後の方向性を明らかにした。


「漢方製剤・生薬製剤・生薬用語の英語表記」(第1集)完成
この度、平成18年度からの厚生労働科学研究「生薬及び漢方処方の有用性評価方法・安全性確保と国際調和に関する研究」(主任研究者:国立医薬品食品衛生研究所生薬部・合田幸広部長)の分担研究「漢方処方の同等性並びに品質確保等に関する研究」のサブトピックのひとつとして、「漢方製剤・生薬製剤・生薬用語に関する英語表記(第1集)」がまとまり、平成20年8月20日発刊の『生薬学雑誌』に掲載された。

伝統薬の価値が国際的レベルで見直され、わが国からも漢方製剤や生薬製剤、生薬についての世界への情報発信が増加している。こうした流れの中で、日本漢方生薬製剤協会(会長:風間 八左衛門)は、これまでの研究や調査結果をまとめる際、「漢方・生薬製剤関係の英語表記が業界でも統一されていない」ために、論文や説明資料を読んだ外国人にはどの製剤を指すのか正確な理解をしがたいとの指摘を受けていた。

一方で、残留農薬の問題などが報道された際には、漢方製剤とそうでないものが混同されて公表されていたために、漢方製剤を服用している患者さんに不安を与える結果となっていた。こうした用語の誤った使用の背景は、一般的に知られている漢方薬という用語を、類似したカテゴリーの薬剤全ての代表として使用するのが簡便で都合がよいことにあると思われる。

こうしたことから、研究、調査結果のまとめや記事の執筆を正確にしていただくために、また報道記事を掲載する際には正確な情報を読者に提供していただきたい思いから、「漢方製剤・生薬製剤・生薬用語の英語表記」を厚生労働科学研究のサブトピックのひとつとして編集することにした。化学医薬品とは異なり、漢方製剤、生薬製剤、生薬についての言い回しは特殊な面をもち、そのために今回収載される用語には解説を加えて理解を深められるように配慮した。

編集には合田生薬部長を初めとして、慶應義塾大学薬学部・竹田忠紘教授、(独)医薬基盤研究所薬用植物資源研究センター・木内文之センター長、千葉大学名誉教授/製剤機械技術研究会 仲井由宣名誉会長、日本漢方生薬製剤協会委員があたった。

漢方製剤・生薬製剤・生薬用語については日本東洋医学会などが用語の英語表記統一に尽力されているが、日本漢方生薬製剤協会は薬剤関連用語に的を絞り、医学用語については日本東洋医学会などにお任せすることとした。今回の第1集に収載した用語は、基本的なもの、誤解を受けやすいものに限定した。決して数は多くはないが貴重な用語集となっている。

この用語集は平成20年9月9日に日漢協ホームページにも掲載された。編集委員の先生方と協力してホームページにアクセスする利用者にとって使いやすいものに再編集され、論文執筆される研究者の方々、報道関係の方々、および一般の方々にも見易く調べやすい内容に替えて掲載された。今後は用語の枠を拡大し、第2集の編集に取り掛かる予定となっている。


新旧常務理事ご挨拶
日本漢方生薬製剤協会 常務理事


このたび、5月15日の総会におきまして、当協会常務理事の職に就任いたしました。早いもので4ヶ月が経過しましたが、漢方製剤、生薬製剤及び生薬の分野は幅広く、毎日が勉強であり、関係資料を読んで理解に努めているところです。
さて、最近の主な課題として、昨年は、厚生労働省が公表した新医薬品産業ビジョンにおいて、漢方製剤、生薬製剤及び生薬は、ベーシックドラッグファーマの一つとして、「今後も質の良い製品を安定的に供給していけるような企業体質の強化が求められる」とされたところから、新医薬品産業ビジョンとそのアクションプランに対し適確な対応を図ることが望まれます。
また、今年は、複数の異なる業態から構成される当協会にとって、より多くの会員会社に利益ある業界活動の実施が望まれるところから、現在、「新組織移行検討班」において、その活動内容と委員会組織体制の見直しが行われ、新体制移行への検討が進められております。
こうした中、当協会の事業活動は、漢方製剤や生薬或いはそれらのエキスなど業態が多岐に亘っており、このような多様な会員会社の要望に応えるべく、漢方製剤、生薬製剤及び生薬の共通する様々な課題について、その解決と実現に向け努力していきたいと考えております。
何卒、御指導御鞭撻の程よろしくお願い申し上げます。
日本漢方生薬製剤協会 前常務理事
市村 博

「大変お世話になりました」
文化庁が発表した「国語に関する世論調査」で、いくつかの言葉を事例に、本来と違う意味で使われている言葉の課題が新聞に掲載されておりました。私が日漢協にお世話になった4年前、広報委員会は「漢方」の字義について正しい知識の普及活動を行い、厚生労働省の記者クラブ、本町記者会等に出向いて説明を行い理解を求め、協力をお願いして参りました。その後も「漢方」解釈の間違った報道については、その都度出版社や新聞社に申し入れをし、地道に正しい知識の普及活動が行われて参りました。
4年前「漢方薬・生薬」に無知の私が4年後の今、日本が独自に作り上げた歴史的伝統のあるこの言葉の重みとロマンに誇りさえ感じられます。
厚生労働省が昨年、漢方薬・生薬を「伝統的な医薬品」として、ベーシックファーマであることを認めたことは、業界の将来の光明に大きな期待を感じました。
明治以前の長い歴史の中で日本の医療を支え、日本人の命を守ってきた「漢方薬・生薬」が、前述のベーシックファーマとして認められたことは、至極当然のことと思われます。
私は「漢方薬・生薬」という言葉が好きです。4年間の日漢協在任が私の人生の大きな誇りの一つになったことを皆様に感謝しつつ、御礼とお別れを申し述べます。