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日漢協 ニューズレター 76号

(第26巻 第1号)2009年5月

巻頭言  高齢化社会と医薬分業

社団法人日本薬剤師会
会長
 児玉 孝

わが国の医療が世界一優れたものであることは、WHOも認めているところであります。国民皆保険制度の下で、わが国の国民は病気になって医療を受けられないという不安を覚えることはほとんどないと思います。医療用医薬品として薬事法に基づき承認された医薬品は、一部の例外を除き薬価基準に収載され、保険医療の中で使用することができます。そして多くの生薬や漢方エキス製剤も薬価基準に収載されており、高齢化社会の中で西洋医薬品とは一線を画した分野の医薬品として、わが国の医療に貢献されていると認識しております。

さて、近年におけるわが国の医療においての大きな課題は、急速な高齢化への対応であると考えます。高齢化への対応という側面からは、大きく二通りの考え方があると思います。一つは高齢患者の特性を考慮した医療提供のあり方であり、もう一つは高齢化に伴い増加する医療費への対応であります。

高齢患者の特性として、複数の疾患に罹患していることが挙げられます。そのため複数の医療機関への受診の頻度が高まり、使用する医薬品の種類も多くなることから、医薬品の相互作用や重複投薬の危険性が高まることになります。このような危険性を軽減するためには、使用している医薬品を誰かが一元的に管理しておくことが重要となり、“かかりつけの薬局や薬剤師”がその任務を果たさなければならないと考えています。いわゆる医薬分業の割合は、平成15年度に50%を超え、平成19年度には57. 2%まで増加しました。平成18年6月の医療法改正において、薬局は医療提供施設であると明確に示され、また調剤という機能が医療機能であると明記されました。更に、薬剤師の養成のための薬学教育の年限は、医学教育と同じ6年となり、平成24年4月には6年教育を受けた薬剤師が社会に登場することになります。漢方薬も含め、医薬品を安全に、かつ安心して使用してもらうため、良質な医薬分業を展開する環境が整備されてきています。高齢化社会における医療にこれまで以上に貢献できるよう努力してまいりたいと考えています。

次に、増加する医療費への対応であります。政府は、高齢化などによって増加する医療費を適正化するための施策を次々と打ち出しています。高齢化は止めようもない必然ですが、国民が安心して生活するためにも医療費の伸びを一律に抑えるという考え方には賛成できません。診療報酬や調剤報酬について見ると、昨年4月には若干の引き上げがなされましたが、平成12年度から8年間引き上げは行われませんでした。その結果として医療崩壊という状況を生み出してしまいました。昨年末より、政府は中福祉・低負担から、中福祉・中負担への切り替えを示唆しており、安定財源の確保という方向も見られています。

これからは、国民が安心して医療を受けられる環境整備がなされるよう期待したいと考えます。