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日漢協 ニューズレター 83号

(第28巻 第2号)2011年9月

巻頭言  日本東洋医学会が抱える国内外の課題

日本東洋医学会 会長
  
石川 友章

私たち医師は、どちらかというと直近の診療報酬改定に注意が行き過ぎて、他の事に余り関心を向けない傾向があり、しばしば対応が遅れがちになる。これは常に自戒しなければならない問題である。

国内問題としては、平成20年12月1日から始まった公益法人改革という流れがあり、当学会も平成25年11月30日までに、公益法人か一般法人に移行しなければならない。今回の法人改革は制度疲労に対応し、更に財団法人日本漢字能力検定協会などの、野放図な私的流用を防止し、本来の公益性を護るためにある。このための会計基準の煩雑化は、専門家でない私たちには、中々理解できない部分がある。

日本東洋医学会の本部及び支部の役員は全て無報酬で、日本の伝統医学である東洋医学・漢方を国民医療として発展普及する事に真摯に努力して来た。

世界の潮流としてWHOも伝統医学の必要性を認め、その地域に根差した伝統医学が国民に支持され、その有効性と経済性が閉塞している医療経済の活性化に寄与していると考えられる。

学会としては、常に国民の皆様に安心して医療を受けて頂くため、医療の質の担保を高めていく必要があり、そのためのEBMの構築、専門医制度の維持、あらゆる医療情報の公開と発信を行っていかなければならない。そのためには、東洋医学の大学教育の充実と医師国家試験での出題が、医学生のモチベーションを高め、東洋医学という違ったディメンジョンの思考が卒前卒後も含め、医療現場における危機管理に充分に役立つものと考える。

先年の「事業仕分け」で、漢方製剤の保険外し問題が起きた訳だが、20日間ばかりで100万名に近い署名を頂き、国民の漢方に対する認識の高さを知る事が出来た。しかし、国民医療を護るためには、健康保険医療を維持し、この様な事態に至らないよう努力し続ける必要がある。

国外に目を向けると、WHOによる伝統医学用語の国際標準化という課題があり、これはICD11への対応という難しい問題を抱えているが、慶應義塾大学の渡辺賢治先生を中心に継続的かつ精力的に実務を遂行して頂いている。

日本にとって今一番重大な問題は、国際標準化機構(ISO)関連の問題である。ISOはネジやナットといった産業分野の国際標準化を行うのが本来のテーマなので、本来は経済産業省関連のテーマであるが、最近では知的財産権にも関与してきており、これに医療関連問題が加わると厚生労働省のマターにもなる。

ISOでは技術委員会(TC)がテーマを決めてその標準化を検討している。TC215に保健医療情報を扱う分野があるが、中国は、新たにTC249を立ち上げ、ここで中医学を国際標準として伝統的中国医療を検討するという戦略に出てきている。

作業グループとして、1)生薬、2)植物製剤、3)鍼灸の鍼、4)その他の医療用具、5)医療情報を検討する事になった。これに関連する分野では、1)生薬では、生薬学会や生薬関連会社、2)植物製剤に関しては、日漢協の各社、3)鍼灸の鍼では鍼製造会社、4)その他の医療用具等もその関係製造会社が動向によっては多大なる影響を受ける。

中国主体の国際標準化が行われると我が国にとって、大きな経済的な打撃を受ける事は目に見えている。国益を考えるとき、厚生労働省、経済産業省、産業界、医療界、JLOM関連学会等が一致団結して、ISO・TC249に関する具体的な対策を早急に十分に行う必要がある。

伝統医学は、各々の国や地域に根差し、文化、民族、風俗、気候に大きく関わっている。デリケートな問題を含むため、その国の実情や制度を理解し、画一的でなく十分な配慮の下に標準化を行うべきである。