制作物のご紹介 >> ニューズレター >> 日漢協 ニューズレター 86号

日漢協 ニューズレター 86号

(第29巻 第2号)2012年9月

トピックス


第63回日本東洋医学会学術総会市民公開講座

「糖尿病・生活習慣病と糖質制限食」
江部康二先生 (高尾病院理事長)



 西暦2000年(平成12)6月、京都でスタート以来13回目となる市民公開講座が、7月1日、午後2時30分より京都国立国際会館で開催された。  講師は地元京都の高尾病院理事長・江部康二先生、「糖尿病・生活習慣病と糖質制限食」の演題で、1時間半に及ぶ講演が行われた。



吉田麻美先生
6年前に大阪で開かれた第7回の市民公開講座で演者の一人だった、藍野病院内科の吉田麻美先生の司会により幕を開けた講演の冒頭、江部先生は両親が糖尿病で、2002年に糖尿病が発覚したことに触れ、「私は糖尿病のサラブレッド・・・」とユーモアたっぷりに自身の病歴を紹介の後、従来のカロリー制限食ではなく、糖質制限食という新たな考え方で、糖尿病を克服したこと、アメリカなど海外の動向、そして高尾病院における治療実績等を交えて講演を進めた。 


●カロリー制限食と糖質制限食


江部康二先生
 これまで糖尿病の食事療法は、脂肪悪玉説が流布され、カロリー制限食が基本であったが、本年5月18日の第55回日本糖尿病学会年次学術総会で、糖尿病食事療法の選択肢の一つとして糖質制限食が容認され、その是非がマスコミでも話題となっている。
 江部先生は「カロリー制限食一辺倒からの歴史的転換」と喜びを語り、糖尿病と糖質の関係について以下のように指摘された。
 ・糖尿病の人は糖質を摂取した時、血糖が異常な高値になる。1gの糖質が
  64kgの2型糖尿病の人で血糖値を3mg上昇させ、1型では5mg上昇させる
 ・糖質が主成分の米飯やパンや芋を常用量摂取して2時間後の血糖値を
  測定すると200/dl以上となる
 ・ご飯茶碗1杯150gは約250キロカロリーで、55gの糖質を含有。
  55mg×3mg=165mg血糖値が上昇する
「糖尿病の人においてはインスリンの作用不足があり、糖質を処理するシステムが破綻しているから」とその理由を述べた。

●糖質制限食は人類の健康食
 続いて糖質制限食の3パターン、カロリー制限食と糖質制限食の比較、糖質制限食十箇条、糖質制限食の対象、人類の食生活、精製技術開発以後の食生活、人類の食生活3段階と血糖値、ブドウ糖ミニスパイク、グルコースミニスパイクと生活習慣病、糖質制限食の利点、現行の糖尿病治療の問題点、テーラーメードダイエット、糖質制限食の長期予後の予測等について概説した後、次のようにまとめた。
 ・生活習慣病の根本要因は精製炭水化物の頻回過剰摂取
 ・糖質、脂質、蛋白質のうち食後高血糖を生じるのは糖質のみ
 ・食後高血糖と高インスリン血症が動脈硬化やガンの元凶であり、糖質制限食なら
  食後高血糖・高インスリン血症はなく、肥満も改善する
 ・糖質制限食実践により、全身の代謝・血流が改善
 ・糖質制限食は肥満・糖尿病・生活習慣病の治療・予防食である



 最後に「糖質制限食は進化過程700万年の本来の食事であり、人類の健康食である。70億の人類を養うにはテーラーメードダイエットが必要」と強調して、講演を締めくくられた。
 自らのデータを示しながらグローバルな視点からの講演は、江部先生がネットで呼びかけた、京都人、糖尿人、メタボ人、関西人のみならず、多くの聴衆が熱心に聴き入っていた。市内左京区から訪れたという男性は「5年ほど前から糖尿病と言われ、好きなお酒も我慢してきました。早速、糖質制限食を始めてみたい」とご満悦の様子だった。