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日漢協 ニューズレター 89号

(第30巻 第2号)2013年9月

生薬学教室を訪ねて[59]


金沢大学医薬保健学域
薬学類・創薬科学類 資源生薬学研究室

漢方生薬の基源の解明と使用の是非
御影教授(左)と佐々木准教授

地域と世界に開かれた教育重視の研究大学
国立大学で三番目に長い歴史を有する金沢大学は、1862 (文久2)年加賀藩により設立された加賀藩彦三種痘所を源流とし、昨年は創基150年を迎えています。以来、旧制六医科大学の一校として幾多の変遷を経て、1949(昭和24)年法文学、教育、理、医、薬、工学部の6学部からなる新制大学として発足。キャンパスが金沢城址にあったことからドイツのハイデルベルグ大学と共にお城の中の大学と呼ばれていました。

その後、法文学部が文、経済、法学部に改組され、8学部になっています。1984年より手狭になった城内の丸の内キャンパスから、現在の角間キャンパスへの移転が始まり、2004(平成16)年移転完了に伴い、国立大学法人に移行しました。2008年には従来の学部・学科制(8学部25学科)から3学域16学類という教育組織に再編・統合し、大学改革の理念として「地域と世界に開かれた教育重視の研究大学」を大学憲章に掲げて今日に至っています。


生薬学の生みの親・大井玄洞


39,000m2の薬用植物園の園内は、
中央、里山、階段エリアで構成されている
金沢駅からバスで30分余り、緑に囲まれた広大な角間キャンパスは267万に及び、東京ドーム約57個分に当たる広さの校地に、人間社会学域、理工学域、医薬保健学域の3学域16学類、そして大学院には教育学、医学系、人間社会環境、自然科学、法務の5つの研究科が設置されています。従来の薬学部は、今は医学類、薬学類、創薬科学類、保健学類の4つの学類で構成される医薬保健学域に属しています。

薬学部の歴史も古く、その前身は1867(慶応3)年に設置された加賀藩卯辰山養生所の舎蜜局に遡り、薬学のパイオニアとされる同校ならではの逸話にも事欠きません。その一つは独逸語のPharmakognosieを生薬学と訳し、生薬学の生みの親として知られる大井玄洞です。加賀藩の儒医の子として生まれ、同校の教壇に立つ傍ら、ドイツのワイガントの著を訳し『生薬学』1巻、2巻を著しています。

人気を呼ぶ身近な薬草勉強会


研究室
資源生薬学研究室は、1891年に置かれた三つの教室(製薬、分析、生薬)の一つ生薬教室に端を発します。120年以上の伝統ある同教室を担う御影雅幸教授は25年前に近畿大学、富山医科薬科大学を経て赴任されました。現在、研究室は御影教授の下に佐々木陽平准教授、三宅克典助教、博士後期課程9名、博士前期課程5名、学部生3名、ポスドク、研究生各1名、研究協力員2名、薬草園スタッフ5名の陣容で、学生にも人気のある研究室として知られています。

研究活動は幅広く、品質の良い生薬を作ることを目的に、生薬の資源確保から品質評価まで多方面に亘り、以下のように展開しています。

・化学分析 : 薬用植物・生薬に含有される有効成分や指標成分の化学的解析
・本草考証 : 生薬の原植物などの歴史的変遷の解明
・組織形態・組織培養 : 生薬の品質の外部形態による評価。組織培養によるクローン株の作成
・DNA鑑定 : 植物の系統関係の推定。生薬の原植物の同定
・国内外調査 : 生薬の市場動向や資源状況の調査

他にも薬用植物園の園長として「身近な薬草勉強会」と銘打ち、毎月、定例会を開催しています。

この9月28日には87回目となる定例会が予定され、10月26〜27日には一泊で第14回加賀能登の薬草シンポジウムを開くなど、漢方・生薬の普及啓発にいそしんでいます。