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日漢協 ニューズレター 91号

(第31巻 第1号)2014年5月

巻頭言  第65回日本東洋医学会学術総会開催にあたって

新潟医療福祉大学
佐藤 弘

永富独嘯庵は、『漫遊雑記』の中で、医学を学ぶ方法として、「傷寒論を読むこと、良き師友を択ぶこと、親試実験」をあげ、中でも、親試実験を重要視していました。ベルツは、医の道は「実業なり。技術なり」とし、書物で学んだり、書物から得られるものではない、実地臨床を通して始めて得られるとしています。故大塚敬節は、「術なくて 後に学あり 術なくて咲きたる学の 花のはかなさ」と詠んでいます。このように、古今東西を問わず、医学においては、術が重要であると考えられてきました。

しかし近年になり、EBMが声高に叫ばれるようになり、漢方医学もその大波に巻き込まれています。EBMを否定するものではありませんが、実際の診療では、EBMが実施できない患者も多く存在します。今回学術総会のテーマを「アートの復権〜人間的な医学・医療を求めて」としたのは、EBMすなわちサイエンスのみでは対応が限定されており、どうしても経験や診療上のコツ、すなわちアートの必要性を強調したかったこと、そしてこうした考えを共有することが重要と考えたからです。初日に行なわれる伝統医学臨床セミナー「診療のこつここがポイント ベテラン医師に聞く」は、今回のテーマそのものを追求する企画です。

もう一つ今回の学術総会では、心身相関と宗教の問題を取り上げたことも特徴といえます。もともと漢方医学は、心身一元論にたっています。特別講演1では、住職で作家である玄侑宗久氏に「身心不二の叡智」と題してご講演をいただきます。東洋的叡智のもたらす身心状態を紹介し、併せて現代社会が悩む身心の乖離の問題を論じていただけるかと思います。宗教に関しては、特別講演2東京女子医科大学名誉教授の岩田誠先生から「それは祈りから始まった」と題し、祈りと医療・芸術・宗教との関連をお話しいただけると思います。教育講演1では、上智大学神学部教授の島園進先生に「科学の彼方にあるもの 宗教の存在意義」と題し、スピリチュアティと宗教、チュアルケアの重要性などをお話ししていただくことになるかと思います。教育講演2では、在米の安西英雄氏に「米国における補完代替医療の現状」と題して、教育講演3では、久しぶりに改訂となったDSM-5の解説を、九州大学教授神庭重信先生に「新しい精神疾患分類と漢方」と題しご講演をいただきます。私自身は、「治るということ」「治すということ」と題し、先人たちの考えを紹介しながら、治すことの難しさ、これからの医療の在り方について述べてみたいと思います。

日漢協と共催となります「市民公開講座」では、三浦於菟先生の「漢方薬の名前はなぜ難しいか」と神田香織氏による講談「漢方復興の祖、和田啓十郎伝」が行われます。

第65回日本東洋医学会学術総会開催にあたり、貴協会からの多大なるご協力に感謝申し上げますとともに、貴協会の益々のご発展を祈念しております。