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日漢協 ニューズレター 92号

(第31巻 第2号)2014年9月

日漢協に寄せて

日本薬剤師会 会長
山本 信夫

平成26年6月28日、29日に開催された日本薬剤師会総会において、会長に選任された山本信夫でございます。日本漢方生薬製剤協会のニューズレターに、ご挨拶の機会を頂戴いたしましたので、一言述べさせて頂きます。

薬剤師の本分は「医薬品の供給」を通じて、国民の健康の保持・増進に貢献することにあります。我が国では、およそ130年前に欧州の制度を導入して「薬剤師」を創りました。数百年に及ぶ鎖国政策の結果、欧米の文化、技術や知識が十分に紹介されなかったために、日本独自の文化が醸成されたことも事実ですが、反面「科学技術」をはじめとする自然科学や医学・薬学については、最先端の知見に後れを取っていたことも事実です。しかしながら、どんな環境の中にあっても、人々は健康を害し病に侵されます。四方を海に囲まれた我が国にも、外国で流行した感染症や見知らぬ疾患に罹患する者も少なくなかったことと思います。そうした時代、病に罹った人々は古来より使われてきた、生薬に頼って治療を行ってきました。今ほど科学がその本質を見極めていないものの、東洋的な思想に基づく理論に原点を置き、治療方法を確立して、住民の健康に貢献してきました。中国の歴史にはかないませんが、3000年近い歴史の経過の中で、我が国の健康を守ってきた知識が「生薬であり漢方製剤」だと認識しています。

明治維新の後、明治政府は「西洋式医学」を我が国のオフィシャルな医学と定めたこともあり、薬剤師の扱う薬品は「西洋薬」が中心となりました。その一方で、薬剤師の寄って立つ薬学も、分析や製造といった分野を中心に発展してきた経過があります。我が国の健康を守ってきた生薬・漢方の分野は「薬用植物学」、「生薬学」といった、薬学の主流から少し外れた学問のように思われていたのではないでしょうか。薬科大学に通っていた頃を思い返すと、発音が難しいラテン語の植物名や難しい漢字で書かれた生薬の名前を覚えるのが苦手で、なんとなく敬遠していたように思います。今になって考えれば、もう少し真面目に取り組んでいれば、随分と薬剤師としての視野が広がったのではと反省をしています。というのも、薬剤師になって現場での経験を積んでくると、それまで遠くに感じていた生薬・漢方製剤が何とも身近に感じられるようになりました。使い慣れた西洋薬も、もとを質せば生薬をはじめとする天然物に辿り着きます。様々に配合される医薬品の処方も、その始まりは漢方製剤の理論に習ったものも少なくありません。原典は中国から輸入されたのち、長い時間をかけて我が国の社会の中で育まれた「生薬・漢方製剤」は、医薬品であるとともに我が国の貴重な文化でもあります。これからも、我が国古来の文化と国民の健康を守るために、純良で効果的な「生薬・漢方製剤」の供給にご尽力されることを切に願うものです。