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日漢協 ニューズレター 92号

(第31巻 第2号)2014年9月

生薬学教室を訪ねて[62]


岩手医科大学薬学部天然物化学講座

糸状菌のポリケタイド生合成
マシナリーを探る

藤井 勲 教授

医療人たる前に誠の人間たれ


岩手医科大学 薬木園
岩手医科大学の歴史は1897年(明治30)に開設の私立岩手病院に併設された医学講習所・産婆看護婦養成所に遡ります。かつて日本のチベットなどと言われた岩手県は、医師や看護師も少なく医療にも恵まれませんでした。この貧困なる状況を憂いていたのが創立者の三田俊次郎氏です。

岩手病院が創設された4年後の1901年には、東北・北海道初の私立岩手医学校を設立、建学の精神として掲げたのは「医療人たる前に誠の人間たれ」でした。1912年に医育改革により閉校に追い込まれましたが、1928年(昭和3)に私立岩手医学専門学校が認可され、1947年、岩手医科大学に組織変更し、1952年、新制岩手医科大学が発足しています。

医学部に加え、東北・北海道で初めての歯学部が開設されたのは1965年でした。そして、2007年(平成19)に薬学部が開設され、盛岡市の南隣の矢巾町に矢巾キャンパスが竣工されました。2011年には医学部、歯学部が盛岡市内の内丸キャンパスから移転し、医・歯・薬3学部の学生は、同一キャンパスで、共通の「講義・実習棟」で、それぞれ異なる学部の学生と共に学んでいます。

連携教育、連携研究、連携診療
薬学部が開設されて8年目になる同大学では、「連携教育、連携研究、連携診療」をモットーに日本で初めての学部を越えた統合基礎講座が開設されるなど先進的取り組みが注目されています。

薬学部では1年次に「問題基盤型学習」が取り入れられ、3学部の学生が同じグループになって学習・討議を行い基礎学力を身に付けるとともに、救急救命医や看護婦によるAEDを用いた心肺蘇生法講習など、早期専門教育にも力を入れ、医療人に必要な基礎力を養っています。

4年次から構造生物薬講座、微生物薬品創薬学講座、神経科学講座など16の講座に配属され、5年次は実務実習、チーム医療の本質を学んでいます。

学べ、されど真似るな


岩手医科大学薬学部天然物化学講座の皆さん
天然物化学講座は東京大学薬学部の天然物化学教室から赴任された藤井勲教授をはじめ、林宏明准教授、橋元誠助教、浅野孝助教の4人の教員と4年生8名、5年生8名、6年生13名の学生で構成され、総勢33名の陣容になっています。昨年は薬学部一期生10名、今年は二期生7名が巣立っています。

同講座では微生物や植物が化合物を作り出す生合成の仕組みを明らかにすること、生物の有する化合物生産能力を能動的に利用した「生物合成」の新しい方法論の確立を目指して研究を進めており、現在、主な研究テーマは
・ ポリケタイド生合成酵素の機能解析
・ 高等植物のトリテルぺノイド関連化合物の多様性と生合成酵素に関する研究
・ 薬用植物の自生地調査と系統解析
・ 薬用植物の培養細胞系におけるアルカロイド成分の生産及び生合成機構の解明

講座の基本理念として①身体を鍛える(実験科学は体力が資本です)②人との和を尊ぶ(研究は共同作業です)③学べ、されど真似るな(独創性をもとう)以上の3点を掲げ、日々、研究に勤しんでいます。