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日漢協 ニューズレター 95号

(第32巻 第2号)2015年9月

トピックス


私の健康法  エッセイスト  岸本葉子 さん
生活の柱、心の柱に

●40歳で虫垂がんに


漢方薬は一生のみ続けたいと思います

2年余の保険会社勤務を辞して、中国の北京外国語学院へ留学したのは1986年(昭和61)、25歳の時だった。文化大革命終結から10年後の中国は驚くことばかり、スカート姿の女性はいなく、工事現場の足場は竹で組まれていた。プラスチックなどの工業製品は身近になかったが、人々の日々の暮らしには、気功で体調を整えるなど長年の歴史と伝統に裏打ちされた生活の知恵が息づいていることを身をもって体験する。
10カ月の中国滞在中は留学生向けの寮で過ごし、勉学の合い間にアジア各国を旅した。帰国後、筆一本の文筆活動に入り、以来、旅にまつわるエッセイや日常生活を綴る身辺エッセイを矢継ぎ早に上梓、著書の数は100冊を超え、才色兼備のエッセイストとして人気を呼んでいる。
エッセイストとしての名を馳せたのは、40歳の時に虫垂ガンと診断され、その手術、治療体験を2003年に著した『がんから始まる』。がんがわかった経緯、入院から手術・退院までの詳細、退院後に取り組んだ漢方治療や食事療法について丹念に記され、大きな反響を呼んだ。
この他のがんにまつわる書物には『がんと心』『四十でがんになってから』『がんから5年』などがある。


●食事のつど、家庭用精米機で精米
約一か月に及ぶ入院の後に取り組んだのが漢方治療と食事療法だった。「がんになって本当の恐さに直面したのは退院後でした。がんが完治したわけではありませんでしたので、再発や進行を防ぐにはどうすればいいのか、いろいろと情報を集めました。それまでは西洋科学の信奉者だったのですが、知人に漢方がいいと教えられて訪れたのが、中西医結合を行っているクリニックでした」
食事療法では、化学調味料は使わない、肉は摂らず、蛋白質は小魚から、野菜は漢方薬の効果を減じる紫蘇、茗荷などのハーブ系や山菜は摂らない。殊にご飯が好きで食事のつど無農薬の米を家庭用の精米機で精米して食している。「本当においしいですよ。糠は糠床にして胡瓜などを漬けています」
食事に気を配るとともに運動にも余念がない。体幹を鍛えるために月に3〜4回、加圧トレーニングに通い、家では仕事の合間にストレッチボード、マットで片足立ちなどを行っている。腹式呼吸にも勤しむ。月に一度通うクリニックでは脈診などによる診断の後、その日の体調に合わせた薬を処方してもらい、現在は煎じ薬、粉薬を4種類ほどのんでいる。
漢方薬を服用後はそれまで罹っていた花粉症に悩むこともなく、更年期障害にもさほど苦しまずに済んだ。
心配していたがんの再発や進行もなく、元気このうえない。「エビデンスがないので、私の口から漢方薬が効いているとは言えませんが、漢方や食事療法の恩恵を受けているのは確かです。生活の柱、心の柱になっていると自信をもって言えますね」

プロフィール
1961年(昭和36)6月、神奈川県鎌倉市生まれ。 1984東京大学教養学部卒業、東邦生命保険相互会社入社。 1986年9月、北京外国語学院留学。10か月の中国留学を 経て、執筆活動に入る。NHK中央放送番組審議会副委員 長を歴任。淑徳大学客員教授。 著書は『ブータンしあわせ旅ノート』(角川文庫) 『わたしの週末なごみ旅』(河出文庫) 『欲ばらないでちょうどいい』『いのちの養生ごはん』(中公文庫) 『五十になるって、あんがい、ふつう』(ミスター・パートナー) 『ちょっと早めの老い支度』(オレンジページ)など多数。

表紙写真採用者のコメント

株式会社ウチダ和漢薬 信頼性保証室 浅間宏志

夕日に照らされたトリカブトの美しさに魅かれて撮った1枚ですが、薬用植物を育む自然と多くの方への感謝を込めて、シャッターを切りました。