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日漢協 ニューズレター 96号

(第32巻 第3号)2016年1月

ご挨拶 2016年新年を迎えて

日本漢方生薬製剤協会
会長
加藤 照和

新年あけましておめでとうございます。

本年は、日漢協「中長期事業計画2012」の最終年を迎えますが、「原料生薬の安定確保の推進」を最優先課題とし「品質・量・価格」において安定的な確保を目指しております。

中国産の生薬価格指数は、前回の報告で、2006年度比で2倍強に上昇しておりましたが、今回2014年度の調査で2.5倍近くへとさらに上昇しており、引き続き厳しい年となりそうであります。

このような状況下、昨年9月、中国商務省の直轄機関である中国医保商会が、傘下の中国伝統薬メーカー数十社を伴い訪日され、日薬連の木村理事長と国際委員長、在日中国大使館の景参事官にもご参加いただき、相互理解と交流を深めました。

団長の劉副会長は、中国政府の意向の下、厚労省の医政局経済課と医薬食品局審査管理課を表敬訪問し、両国間の行政レベルでの伝統薬発展のための意見交換を希望されると同時に、当協会を通じて、中国の生薬輸出数量および単価データを過去7年間分、さらには今後毎年、継続提供することを約束されました。また、厚労省からは、貴重なデータ提供への御礼と共に、漢方・生薬に関しての対外窓口を、医政局経済課が担当することをご説明いただきました。今後は、日中伝統薬交流を官民双方で行うことができますよう、日漢協が架け橋としての役割を果たしてまいります。

一方、原料生薬の国内栽培の振興につきましては、農水省、厚労省、日漢協が主催する「薬用作物の産地化に向けたブロック会議」が3年目を迎え、過去2年に勝る大きな成果を期待しているところであります。本格的な生薬栽培に繋げていくため、平成28年度から導入される、新たな支援事業である「産地支援体制整備」にも積極的に参加する方向で検討中であり、産地との折衝のみならず栽培指導や相談窓口等、もう一歩踏み込んだ取り組みを考えております。

日本がGMP国際標準であるPIC/Sに加盟したことに伴い、その医薬品品質要求に、製品のみならず生薬レベルで応えていかなければなりません。日漢協では以前から、薬用作物の栽培や加工・調製における管理レベルアップのための手引きの作成に着手しており、昨年6月に日漢協版GACPを取りまとめました。また、国際規格品質の考え方に基づくICH Q10医薬品品質システム(PQS)の導入が求められており、日漢協会員会社はこれらに積極的に対応し、漢方・生薬製剤の品質確保に努めてまいります。

中国もPIC/S加盟を目指しており伝統薬の品質向上を生薬の段階から強化する国の政策を、中国国務院が「2015-20中薬材保護および発展5カ年計画」として発表しております。これは中薬材保護と発展、つまり生薬の栽培・生産技術と品質向上に関する計画であり、初の国家級プロジェクトとして大きな予算で取り組むものであります。我が国の技術的優位性を確保することこそが、中国から頼られる存在となるわけであり、高品質な原料生薬を中国から継続的に調達し続けるためには、国際基準をクリアし、世界最高水準の有効性・安全性・品質を誇る伝統薬として、漢方・生薬製剤が常にリードしていく必要があります。また、国家レベルで取り組む中国に対して、優位性を確保し続けるためには、業界だけの取り組みでは限界もあり、産官学の強力な連携体制で臨むことが不可欠であります。どうか、関係される皆様のお力添えを宜しくお願いいたします。

漢方薬の持続的な安定供給の点では、「OTC類似医薬品の公的保険からの除外」問題と「薬価制度における新たな再算定ルールの導入」の二つの議論がありました。いずれも厚労省をはじめ、日本医師会、日本薬剤師会、日本東洋医学会、日薬連など多くの皆様が、国民医療における漢方薬の役割・必要性についてご主張いただきました。特に、「漢方の保険適用除外」問題におきましては国会議員の先生方からも「その議論は決着済み」との力強いご発言をいただくなど、いずれも国民の利益に叶う正しい方向に進んでおりますことに、感謝と御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。

原料生薬価格の高騰による医療用漢方製剤・生薬の安定供給不安の問題解決のため、厚労省経済課のご指導のもと、新たな再算定ルールの導入に関する日漢協提案を作成・提示いたしました。昨年12月の中医協薬価専門部会において、日薬連の薬価制度改革に関する意見として、「原料生薬価格の大幅な変動に連動する、新たな再算定ルールの導入が必要であると考える」と明記いただき、今後ご議論いただく大きな一歩を踏み出すことができました。国民医療に貢献すべく、持続的に安定供給するために、この再算定ルールの導入を何としても実現するよう全力を尽くして参りますので、関係される皆様のご指導とご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

一方、一般用医薬品につきましては、日薬連・一般薬連の多大なご尽力により、租税特別措置法に基づく数十年ぶりの新税制として、平成28年度税制改正大綱に医療費控除の特例が盛り込まれました。現時点ではスイッチOTC薬のみの適用ですが、国民のセルフメディケーション意識向上のためにも、漢方・生薬製剤を含めたOTC薬全体への適用を視野に入れ、当協会としても一般薬連での活動を強化してまいります。また一般用漢方製剤の適正使用に関連した調査研究を国立衛研と行い、患者様の体質や症状をチェックして副作用を回避することを目的に「一般用漢方処方の確認票」の制作に協力し、周知活動を行っております。

国際的には、昨年6月に北京で開催されたISO/TC249第6回全体会議で、タイトルがTraditional Chinese Medicine(TCM)となり、その後、ISO審査決定機関で最終的に承認されました。日漢協は、日本独自の伝統医学である漢方医学を守る立場で、この活動に協力してまいりましたが、TCM国際標準という枠組みの中で漢方医学が議論されていくことに大きな危機感を持っております。日漢協としては、中国からの原料生薬の安定調達を確保し続け、日本の漢方製剤、生薬製剤および生薬への悪影響が生ずることのないよう、日本東洋医学サミット会議(JLOM)および行政機関と協力して、担当するワーキンググループでの意見発信や提案を行ってまいります。

製薬企業の社会的責任に関する課題として、製薬企業の取組み姿勢が重要視されております。コンプライアンス活動の取組みにつきましては、会員会社の経営トップ自らが強い意識をもって、社会からの信頼に応えてまいります。また厚労省の『医薬品産業強化総合戦略』では、漢方薬は「我が国の医療において重要な役割を担っている」と位置づけられ、『がん対策加速化プラン』では、支持療法の開発・普及の実施すべき具体策として、「術後の合併症・後遺症を軽減する観点から」研究を進めるという具体的な施策提言の一つに、漢方薬の使用が挙げられております。このように漢方薬治療に対する期待が寄せられる中、しっかりと役割を果たしていく所存でございますので、皆様方の変わらぬご指導、ご鞭撻をお願い申し上げます。

本年が皆様にとって最良の年となりますようご祈念申し上げ、私の新年の挨拶とさせていただきます。

(株式会社ツムラ 代表取締役社長)