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身近な漢方 -女の更年期、男の更年期-

第3章 漢方で更年期を治療する


「腎虚」と「気逆」
加齢に伴って起こる更年期は、漢方では「腎虚 [ ジンキョ ]」によるものと考えられます。
女性の更年期は閉経前後に急激に起こる「腎虚」の影響で、「気逆 [ キギャク ]」を伴いやすいのが特徴です。冷え・のぼせ、ホット・フラッシュ(急激にのぼせて顔が赤くなる)、突然発汗する、動悸がする、イライラ感などの更年期によくみられる症状はこの「気逆」による症状です。また女性の更年期では血の異常(血虚 [ケッキョ] や [ オケツ ] )を伴う場合が多く見られます。
これに対して、男性の更年期では「腎虚」は比較的ゆるやかに進み、それに伴って起こる「気虚 [ キキョ ]」の症状が目立ちます。やる気がでなかったり、集中力がなくなったりするのは、そのためです。

● 腎虚 (五臓の一つ)
五臓は肝・心・脾・肺・腎のことで、現在の西洋医学における臓器の考え方とは異なります。人体の機能をいくつかに分類したうちの5つと考えて下さい。このうち腎の働きの一つに、先天の気、すなわち生まれつきもっているエネルギーをコントロールするというものがあります。このエネルギーは加齢により減少するので、年をとると腎虚がおきてくるわけです。

● 気逆
気とは「気・血・水 [ キ・ケツ・スイ ]」の三要素の一つで生体のエネルギーとその流を指します。「気逆」とはこの流が逆行している状態を、「気虚」とはエネルギーが低下している状態を、「気滞 [ キタイ ]」とは気の流れが滞っている状態をいいます。「血」は血液とその働きで、「血」の異常には「血虚」(血が不足している)と、「血」(血がめぐらず、滞っている)があります。「水」は血液以外の液体とその働きのことで、これが滞ると「水滞 [ スイタイ ]」となります。

■ 女の漢方
「気逆」に対する生薬 + 「血」の異常に対する生薬 の組合せでできた処方が中心になります。

<気逆に対する処方>
一般的に有名な加味逍遙散 [カミショウヨウサン] が、最もよく用いられていますが、温経湯 [ ウンケイトウ ]、五積散 [ ゴシャクサン ]、女神散 [ ニョシンサン] にも気逆を治す効果がありますので、症状に応じて使い分けます。いずれの処方にも「血」の異常を改善する成分も含まれます。

<その他の処方>
もちろん更年期の症状はこれだけで解決できるものばかりではないので、必要に応じて「気滞 [キタイ]」や「水滞 [スイタイ]」の処方を用います。十全大補湯 [ジュウゼンタイホトウ] や 八味地黄丸 [ハチミジオウガン] などの補剤が必要な場合もあります。

■ 男の漢方
腎虚を中心に、ストレスに対する処方を考えます。

代表的な処方 −八味地黄丸 [ハチミジオウガン]
腎気を補う作用があり、腎虚、すなわち精力減退、下半身の機能の衰え全般に効果が期待されるほか、最近では糖尿病や高血圧に伴う症状にも効果が期待されています。

ストレスが強い人には、竜骨 [リュウコツ]、牡蛎 [ボレイ]の成分を
ストレスによる影響が強く、精神的な症状が前面にでている場合には、竜骨、牡蛎という鎮静作用がある成分の入った漢方薬をしばしば使います。竜骨、牡蛎は鎮静作用がある成分です。イライラが強い症例には柴胡加竜骨牡蛎湯 [サイコカリュウコツボレイトウ]、不安が強い症例には桂枝加竜骨牡蛎湯 [ケイシカリュウコツボレイトウ] があり、これらの漢方薬は八味地黄丸と併用して処方することもあります。もっと抑うつ傾向が強い場合には、半夏厚朴湯などを使います。

比較的高齢で体力の衰えが目立つ −補剤
長い時間をかけて腎気が衰える男の更年期では、体力の消耗も深刻です。体力の衰えが著しい場合は、全身の体力を補う「補剤」を処方します。代表的な補剤といえば補中益気湯 [ホチュウエッキトウ] と十全大補湯 [ジュウゼンタイホトウ]です。女性でも体力の消耗が強い場合は補剤を使いますが、女性の場合は「血」の異常を改善する作用も含まれた十全大補湯、男性には補中益気湯を使うことが多くなります。