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がん治療と一緒に漢方を

4.がんにならないための「未病(みびょう)」対策

漢方には「未病」という概念があります。病気と言うほどではないけれど健康ではない、病気に向かいつつある状態のこと。病気になってからではなく、病気になる前の予防こそが大事なのです。生活習慣を見直し、病気に傾きかけた体を健康な状態に戻していきましょう。

〜食事〜
がんにならないようにするには、どのような食事を摂ればいいのでしょうか。食事だけでがんを防ぐことはできませんが、体力を維持するには、冷たいものよりも温かいものを食べてください。また、食材は色の濃いものがベターです。カボチャもホウレン草もキュウリも大根も、比べてみて緑の濃いほうを選び、できるだけ皮も一緒に食べるようにします。

また、がんの患者さんは、筋肉の量が少ない人と多い人では、多いほうが長生きするということがわかっています。がんの手術後に医師から「もっと食べて栄養をつけなさい」と言われた人は多いと思います。しかし食べることで脂肪は増えますが、筋肉は運動をしなければ増えません。がんの患者さんは、食べた上で運動することが大事。筋肉の増量が最終的な目標だからです。

食欲がないなど胃腸症状がある人に処方される「六君子湯」も同じです。がんのマウスのうち六君子湯を与えたグループは長生きをするというデータが出ていますが、六君子湯という魔法の長寿薬を飲んだから長生きをしたわけではありません。六君子湯を飲んでいると食欲が増し、そのことによって運動できるようになり、そして長生きをするという理論なのです。



【コラム】  〜舌を診れば胃の調子がわかる〜

口の中の粘膜は食道、胃に向かって一続きになっています。そのため、舌を診ると胃の状態もある程度わかり、
漢方では「舌診」を体の状態を把握するための診断方法の一つにしています。
セルフチェックとしても活用できます。

写真1:舌に苔のように付着物があると
胃の調子が乱れている
写真2:歯形がついた舌は、むくみのサイン

〜睡眠〜
「なかなか寝つけない」「早くに目覚めてしまう」「眠りが浅い」など、睡眠に関わる悩みを訴える人は少なくありません。ただ、多くの方が「7時間以上寝なければいけない」と思い込んでいますが、7時間程度の睡眠が必要なのは、せいぜい50代まで。60代以降は生物学的に6時間睡眠で十分なのです。

しかし短時間だからこそ、睡眠の質は高めなければなりません。そんな時によく使う漢方薬が、抑肝散です。イライラ怒りっぽい、不眠、中途覚醒に効く薬で、認知症でこうした症状が現れた場合にも使われています。睡眠の悩みがある方は医師に相談してください。

〜便通〜
便がカチカチに硬くて出ない、通勤電車の中でいきなりおなかがゴロゴロ、冷えるとすぐに下痢をする…。便通のトラブルはさまざまです。その多くに見られるのが、体は熱いのに、おなかだけが冷えているというもの。これは実際にはおなかは熱いはずなのに熱いと感じない、つまり「おなかの中の温度を感知するセンサーが狂った状態」と言えるでしょう。あるいはおなかが張るというのも、センサーの異常です。腸の圧が高まれば自然に下げようと働く圧力のセンサーが故障しているのです。

漢方薬の大建中湯はこうしたセンサー異常に効果が期待できます。大建中湯に含まれている生薬は、山椒、生姜、薬用人参の3種のみ。この3つの絶妙な組み合わせが、おなかの温度や圧力のセンサーを正常な状態に戻してくれます。

そして半夏瀉心湯は、おなかのレスキュー隊です。通勤電車で急におなかが痛くなった時に飲むと、すぐに効果を発揮します。漢方薬はゆっくり効果が現れるイメージが強いですが、半夏瀉心湯にしろ大建中湯にしろ、速効性がある薬もたくさんあります。

〜風邪に使う漢方薬〜
風邪のときに処方される薬といえば「葛根湯」が有名ですが、それ以外にも「小青竜湯」「桂枝湯」「麻黄附子細辛湯」といった代表的な漢方薬があります。では4つのうち、どれを選べばいいのでしょうか。

風邪をひいた時の最初の症状を思い出してみてください。「鼻がムズムズする」「のどがチリチリする」「だるい」「関節が痛む」といったさまざまな症状のうち、葛根湯は体力がある人で後頭部の辺りがなんかおかしいと感じる時、小青竜湯は鼻から症状がくる人、桂枝湯は体力がない人、麻黄附子細辛湯はのどの痛みから始まる人というのが大体の目安になります。