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漢方に教えられたこと、気づかされたこと

「腎気」のはなし

「腎気(じんき)」についてお話ししたいと思います。漢方における「腎」の働きというのは、腎臓ではなく、成長や発育を司る生命エネルギーを「腎」と呼んでいます。

中国の古典には、女性は大体七歳になれば腎気が盛んになり、七の倍数、7×4=28歳で筋骨は固く、髪は長く、身体盛装極まり、7×7=49歳で閉経し、子を作ることが出来なくなります、と書いてあります。

男性は基本的には八の倍数。8×4=32歳で筋骨は隆盛期に、筋肉は満ち、盛んになって子どもを作れる状態になり、8×7=56歳前後で生殖や体が衰える。漢方医学はある時点だけを見ているのではなく、子どもからお年寄りになるまでを意識した医学なのです。

腎気が減れば、生命エネルギーが衰える「腎虚(じんきょ)」に陥り、毛が抜ける、白髪が増える、耳鳴りや難聴、皮膚の乾燥、腰痛、骨粗しょう症、尿が出にくくなったり尿漏れしたりする、足が冷えてだるいといったさまざまな症状が現れます。

腎気が損なわれる理由は主に4つ。まず不安になるということ、次に「甘いもの」を摂り過ぎること、3つ目「老倦」と言って働き過ぎること、最後にパートナーとの適切な関係性も大事と言われています。

上手く「老い」を迎えるという上で、とくに私が重要だと感じるのは「パートナーとの適切な関係」です。Eさん(70代女性)は関節リウマチで、卵巣がんを併発されました。卵巣がんの手術と強い化学療法を終えて、幸い助かったんですけれども、以前に比べて痩せて元気がなくなり、眠れないとか、ドキドキするといった症状を訴えるようになり、酸棗仁湯(さんそうにんとう)という薬を処方しました。不眠症やクヨクヨして考えがまとまらない人によく効きます。酸棗仁湯で眠れるようになりましたと言って、すごく喜んでくれたんです。

ところが、ある時、お一人で旅行に出かけて戻ってくると「漢方を飲まなくても平気でした」というんです。それも、ニコニコ笑いながら話されるんです。夫から離れたら体調が良くて、夫が完全にいなくなると不安だけど、いつも一緒だと鬱陶しいと言われました。夫婦のちょうどいい距離、適切な関係性というのがとても重要なのだと実感しました。

また不安もよくありません。不安になると「腎気」が損なわれ、さらに不安になるという「負のスパイラル」に陥ります。ではどうすれば不安にならずに済むのでしょうか。最近私は「腹が据わること」が大事と思うようになりました。実は漢方の中にヒントがあって、腹診をしてみると、不安を感じている人は特に「小腹(しょうふく)」と呼ばれる臍の下が抵抗がなく、ペコペコと弱いんですね。東洋医学でいわれる臍下丹田がしっかりしていると不安を感じにくく、多少のストレスや心配ごとでは動じなくなります。臍下丹田をしっかり意識することが大事です。