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生薬の解説

サンヤク (山薬)

イモ類は,普通は生で食べることが少ないが,その中で特に生食用として好まれるのがヤマノイモとナガイモで,とろろ汁,山かけ,和え物などとして家庭でもよく食べられる.そのうえ,栄養が豊富で,しかも消化酵素のジアスターゼを多く含むので消化吸収もよく,また,古くから「山のうなぎ」と言われるほど精力がつくことで知られている.
和名のヤマノイモ(山の芋)は,古い時代に渡来したサトイモ(里芋)に対して付けられたもので,山薬は,山にできる薬という意味である.また自然に生えることから自然生(じねんじょう)・自然薯(ジネンジョ)とも呼ばれる.

原植物

  1. 原産地又は分布

    中国,日本各地に分布

  2. 植物形態

    ヤマノイモ (Dioscorea japonica Thunberg)
    本州,四国,九州の山野に自生する蔓性,雌雄異株の多年生草本で,地上部は1年生.根茎(担根体)は,多肉な円柱形で,長く直下する.茎は伸長し多数分枝する.葉は対生か,まれに一部互生し,長い葉柄があり,茎と共に緑色.葉身は広披針形~三角状狭卵形,葉先に向って次第に細まってとがり,基部はやじり型,全縁で,上面は平滑である.穂状花序を1~3個ずつ腋生,雌花序は下垂して疎に数花をつけ,雄花序は,直立してやや疎に多数の花を付ける.花は白色,小形である.さく果は平たく円形の3翼を持つ.葉腋に黒褐色球形のむかごが生じる.花期は夏.

    ナガイモ (Dioscorea batatas Decaisne)
    中国原産.通例栽植され,多くの品種があり,担根体の形に変化がある.ヤマノイモとの相違点は,茎,葉柄,葉脈が普通紫色を帯び,葉は3葉輪生するものがあり,葉身は三角形~三角状卵形で基部は耳形で心形,両耳端は円く,葉質はやや厚い.むかごを生じない品種もある.担根体が円柱形で直下するものを薬用に調製する.

生薬

  1. 基原

    ヤマノイモ Dioscorea japonica Thunberg
    ナガイモ  Dioscorea batatas Decaisne
    (ヤマノイモ科 Dioscoreaceae) の周皮を除いた根茎(担根体)を乾燥したもの.

  2. 産地

    中国 (河南省,河北省 等),日本 (青森,長野 等)

  3. 生薬の性状

    本品は円柱形~不整円柱形を呈し,長さ5~15cm,径1~4cm,ときには縦割又は横切したものである.外面は類白色~帯黄白色で,折面は類白色を呈し,平らで粉性である.質は堅いが,折りやすい.
    本品はほとんどにおい及び味がない.


河南省産


四川省産

  1. 成分

    ステロイド:ジオスゲニン,β-シトステロール
    その他:アラントイン,デンプン等

  2. 日局18規格値

    純度試験(1)重金属 10ppm以下
    (2)ヒ素 5ppm以下
    乾燥減量14.0%以下(6時間)
    灰分6.0%以下
    酸不溶性灰分0.5%以下

  3. 適用

    漢方処方用薬である.滋養強壮保健薬とみなされる処方及びその他の処方に配合されている.

  4. 配合される主な漢方処方

    啓脾湯,牛車腎気丸,参苓白朮散,八味地黄丸,六味丸 等

もっと知りたい

生薬の品質を五感で判断する方法
白色又は類白色で,質が重く滑沢のものが良品とされている.
通常水洗後周皮を剥いで白く綺麗に仕上げるが,アクが強い為,自然乾燥した品は灰褐色に変色しやすい.
まれに周皮を除かず輪切りにして乾燥したものがある.

主な種類
  1. 毛条山薬:河南省産

    若干湾曲しており,周皮が少し付いているが,内部の色は純白である.毛山薬とも呼ばれる.

  2. 光山薬

    棒状(チョーク状)で表面が良く削られており,純白で直径が1cm位から太いものは3cm程のものもある.
    河南省懐山付近で産出されるものを懐山薬と呼ぶ.
    その他中国淮河流域で産出した淮山薬と呼ばれるものがあるが,定かではない.


山薬に使用されるイモの種類
かつて山薬は,野生品の自然薯,栽培品の長芋,手芋,伊勢芋,大和芋などから作られていたが,現在は栽培品の長芋である.

薬理作用
男性ホルモン様作用,SOD様作用,免疫賦活作用,抗炎症作用,血糖降下作用 等

代表的な成分の構造式