123号 (第41巻 第3号)2025年1月
新年の御挨拶
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厚生労働省 医薬局 局長 城 克文 |
謹んで新春のお慶びを申し上げます。
年頭に当たり、本年の医薬品・医療機器等行政を展望し、所感を申し述べます。
近年、我が国は世界的にも類を見ない速さで高齢化が進行しており、個人の健康増進に寄与するとともに、医療現場における業務効率化の促進や、より効率的・効果的な医療等に資する各種サービスの提供が求められています。医療DXの一環として令和五年に全国での運用が開始された電子処方箋は、昨年十一月には四万を超える医療機関・薬局に導入され、更に薬局において紙処方箋の調剤結果も登録していただくことにより、未導入の医療機関で処方された薬剤も含めたリアルタイムでの閲覧や重複投薬・併用禁忌のチェックを患者様が受けられる環境が着実に広がっています。今後、更に様々な導入支援策を講じ、より多くの医療機関・薬局への導入や円滑な運用に向けた環境整備を行ってまいります。
本年は、令和元年改正医薬品医療機器等法施行から五年目にあたります。一昨年、昨年と、その施行状況を踏まえた更なる制度改善に加え、人口構造の変化や技術革新等への新たな対応を実現する観点から検討を進めてまいりました。
医薬品の販売制度については、昨年一月公表の「医薬品の販売制度に関する検討会」の取りまとめを受け、濫用等のおそれのある医薬品の適正な販売のための方策や、デジタル技術を活用した医薬品販売業のあり方等について厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会において御議論をいただき、例えば、濫用等のおそれのある医薬品の販売に際しては、年齢や購入量に応じた販売数量の規制や購入理由の確認、店舗における販売手順の整備等を義務づけるべき、デジタル技術を活用した医薬品販売においては、薬剤師等が常駐しない店舗において、当該店舗に紐付いた薬局・店舗販売業の薬剤師等による遠隔での管理の下、薬剤師等が映像および音声による相談応需可能な環境下で購入者へ受け渡すことを可能とすべき、といった方向性が整理されております。
また、近年、海外で承認されている医薬品が日本では開発に着手すらされない、いわゆる「ドラッグ・ロス」の拡大に対しても、昨年四月にとりまとめられた「創薬力の強化・安定供給の確保等のための薬事規制のあり方に関する検討会」報告書やその過程での御議論を受け、日本の希少疾病用医薬品指定制度の見直し、成人用医薬品の開発段階で小児用の開発計画を任意で確認する仕組みの導入、国際共同治験開始前の第Ⅰ相試験の見直しを行うとともに、医薬品医療機器制度部会において更なる制度改正に向けた御議論をいただき、小児医薬品開発の努力義務化や条件付き承認制度の見直しを行う方向で取りまとめられる見込みです。引き続き、ドラッグ・ロス解消等に向けた取組を進めてまいります。
医療機器については、近年、医師から処方されたアプリを患者が自分のスマートフォン等にインストールして使用する治療用アプリなど、プログラム医療機器の開発が進んでおり、その早期実用化に向け、プログラム医療機器の特性も踏まえた薬事承認制度の運用のあり方について、必要なガイダンスや通知、質疑応答集等を発出するとともに、PMDAにプログラム医療機器審査部を立ち上げるなど審査体制の強化を進めてきたところです。引き続き必要な取組を進めてまいります。
近年、医薬品の製造過程における品質問題に端を発した医薬品の安定供給確保が問題となっています。国民の皆様や医療現場の信頼確保に一層努めるべく、昨年四月から、全国のGMP調査結果を分析し、課題を抽出する取組を開始したほか、全ての後発医薬品企業に対し自主点検の実施を指示するとともに、自主点検の内容を踏まえて、都道府県とPMDAが、無通告立入検査を行うこととしております。また、依然として発生する品質不正事案に対して、更なる法令遵守や品質確保、違法行為の抑止に向け、医薬品医療機器制度部会において御議論をいただき、製造販売業者等による品質保証責任の明確化等という方向性が整理されております。これらの施策により、一層の品質確保の取組を進めてまいります。
薬害の被害者の方々への救済に関しては、被害者やそのご家族の高齢化に伴う諸課題への対応や、C型肝炎救済特別措置法の改正を踏まえた被投与者への告知等の対応に取り組み、被害者の方々の適切な救済を着実に進めてまいります。
血液事業については、引き続き、若年層に対する献血の推進、血液製剤の安全性の向上及び安定供給の確保に向けて取り組んでまいります。
今後も、医薬品・医療機器等行政の重責を常に胸に刻みつつ、関係者の皆様と率直な意見交換を行いながら、より良い医療、より良い国民生活の実現に向けて取り組んでまいります。関係の皆様方の一層の御理解と御協力をお願い申し上げますとともに、皆様のますますの御発展と御多幸をお祈りいたしまして、新年の御挨拶といたします。
年頭ご挨拶
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日本漢方生薬製剤協会 会長 加藤 照和 (㈱ツムラ 代表取締役社長) |
謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
あらためまして、この数年間を振り返りますと、私たちはコロナ禍という大変な試練を経験しましたが、その苦境の中、「自然治癒力」を高めることの大切さを再認識し、漢方関連においても有益なエビデンスが数々発信される等、漢方製剤等の新たな強みが明らかになりました。
この経験を通じて、私たちは、漢方製剤等に関する作用機序の解明とエビデンス構築を進めていく中で、今後の未知なる感染症等、国民にとって困難な状況に対応できる漢方のさらなる可能性に、周囲からの期待が今まで以上に高まっていると感じています。
このように、漢方製剤等に新たな展開が望まれる中、協会としては、あらためて高品質な漢方製剤等を継続的に安定供給し、適正使用の推進により国民の皆様の健康と医療に貢献することへの役割が大きくなっているものと認識しております。
2025年度は、日漢協「漢方の将来ビジョン2040」の実行計画「第1期5ヵ年アクションプラン」の最終年を迎えます。中間報告において明確になった課題を解決する活動を完結する重要な1年となります。関係諸団体との連携のもと、協会一丸となり国内外における課題解決に取り組んでまいります。
まず、原料生薬の安定調達については、全体の8割超を依存する中国との良好な関係を維持するため、中国商務部傘下の中国医薬保健品進出口商会(中国医保商会)と交流を継続することが重要であると考えています。
日中交流は、2014年に日漢協が3回目となる訪中を実施して以来、毎年交互に訪中・訪日を続けておりましたが、2019年に中国医保商会が訪日して以降、コロナ禍により途絶えており、一昨年より双方の間で交流再開を模索しておりました。
そしてこのたび、再開に向けた環境が整ったとの合意に至り、実に6年ぶりに訪中団を結成し、昨年2024年11月1日から11月4日までの4日間、中国医保商会や浙江省杭州の中医関連企業等との交流を果すことができました。本年は、中国医保商会と加盟中国企業による訪日団をお迎えするにあたり、有意義な交流となるよう入念に準備を進めてまいります。
今後も継続して双方の交流を重ねることにより、安定的な原料生薬の確保に寄与してまいる所存です。
一方、国内における生薬生産に関しては、薬用作物産地支援協議会の主催で、農林水産省、厚生労働省などのご支援のもと、国内生産の推進・拡大に向けた取り組みを継続して実施しております。
当協会では、国産生薬の生産量を2030年までに2015年度比で1.5倍にすることをビジョンとして掲げており、2023年度においては、2015年度比で1.15倍の国内産生薬を調達しました。
本年も、重点品目を設定し取り組む等、会員会社ならびに関係諸官庁の皆様のご協力を仰ぎながら、国内生産量の拡大を図ってまいります。
「国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョン研究会」については、産・官・学・国民と漢方に対する課題を共通認識として醸成し各種課題解決に向けた検討を進めることを目的とし、2016年に組織されました。今年度・2024年度の研究会は2025年2月17日にKKR ホテル東京にて開催されます。
今回は、「日本の社会課題と漢方薬の必要性~高齢化(フレイル)少子化(プレコンセプション)~」をテーマとし、これまでも取り上げていたフレイルと共に、新たに少子化という社会課題について、プレコンセプション領域におけるエビデンスを示し、漢方薬の必要性についてご討議いただく予定です。
医療用漢方製剤等の薬価については、2024年度薬価改定において、保険医療上の必要性が高い品目の安定供給の確保につながるための薬価上の措置として、特例的に不採算品再算定が実施されました。
継続的な中国産生薬価格の高騰およびインフレによる資材や副原料、エネルギーコストの高騰等、漢方製剤の安定供給に支障をきたしかねない窮状をご理解、ご支援いただいたことによるものと、あらためまして、厚労省、日薬連、中医協などの関係各位に感謝申し上げます。
会員会社におきましては、生産設備や生薬倉庫などの大規模な設備投資等を行い、徐々に改善されつつある限定出荷の完全解除を目指し、漢方製剤等の安定的な供給体制の構築および強化に全力で取り組んでまいります。
一般用漢方製剤・生薬製剤の利活用推進については、2022年からセルフメディケーション税制が改正、2026年まで延長され、対象品目数および利用者数は増加しております。
今後も、多様化する生活者のニーズに応じてセルフメディケーションが尚一層推進されるために、協会として、一般用漢方製剤・生薬製剤を含むすべてのOTC 医薬品を対象とするなどの対象医薬品の拡大、ならびに医療費控除と同様な制度の恒久化を要望するなど、関係団体と協力してまいる所存であります。
医薬品の適正な品質と安全性確保のための法令遵守体制および製造管理体制については、協会として、過去の品質問題事例を今一度検証し、会員会社に対し、協会の目的である「国民の健康への貢献」という原点に立ち返り、一層のコンプライアンス意識の醸成を図ります。
本年は、昨年実施したコンプライアンスの取組み状況に関するアンケート調査の分析結果について、ファーマコエコノミクス研究会代表世話人の白神 誠先生をお招きし、コンプライアンス研修会を開催する予定です。調査結果で明らかになった課題の改善に向け会員会社の意識向上を図るとともに、コンプライアンス体制を整備する活動を推進してまいります。
本年も当協会の活動に一層のご理解とご支援を賜りますよう、何卒宜しくお願い申し上げます。
医療用漢方製剤会議
医療用漢方製剤委員会 委員長 長谷川 久(株式会社ツムラ)
- 医療用漢方製剤委員会
- 委員会メンバーの交代。本草製薬株式会社(退会:阪野雅章氏、入会:南方茂穂氏)。
- 日漢協第246回・第247回理事会の審議・報告事項について説明した。
- 部会(流通適正化、教育研修、有用性研究)および関係委員会等(コード、保険薬価、提言実現)の活動について、部会長・委員長より報告いただき情報共有した。
- 流通適正化部会
- 各社透明性ガイドラインの日漢協ホームページへのリンク掲載へ向けてのアンケート調査の同意とアンケート内容の確認を行なった。
- 公取協情報を共有した。
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各業界団体で定めなければならない「物流の適正化・生産性向上に向けた自主行動計画」の策定について議論した。制定することに関しては同意したが、所管組織が当部であるのかについては課題が残った。最終的には事務局提案で理事会での説明は部会長が行うことにした。
なお、透明性ガイドラインのホームページへのリンク掲載アンケートは11月に実施した。 - 教育研修部会
- 有用性研究部会
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日本東洋医学会EBM委員会協力作業
1)「漢方治療エビデンスレポート(EKAT)」Appendix 2024 update については、当初、11月末の公開を目指して進行していたが、アブストラクターコメントの確認に時間を要しているため、12月中の公開を目指して作業を進めている。
2)「漢方製剤の記載を含む診療ガイドライン(KCPG)」については、Appendix 2024 update から前書き部分の掲載形式を変更する予定である。また、来年度より公開頻度を年1回から年2回とすることを、10月31日のEBM委員会にて決議した。
3)STORK 関連については、英語版添付文書情報の新規作成を各社に依頼済みであり、既に作成済みのメーカーには更新を依頼している。また、GVP業務担当である安全性委員会のメンバーには、STORKの意義を含めた説明を12月18日の会議で行った。
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医療用漢方製剤添付文書情報の調査
「医療用漢方製剤 2022 ―148 処方の添付文書情報―」の2024年度調査(更新)10月17日に英訳版をウェブサイトへ公開した。
10月3日、委員会を開催した。
10月10日、部会を開催した。
教育研修部会の研修会開催(9月18日)
➢演題:「 販売情報提供活動ガイドライン施行5年を迎えて」
・販売情報提供活動ガイドラインとは
・日漢協での取り組み(歴史)
・令和5年度販売情報提供活動監視事業報告書について
・最近のトピックス
➢講師: 松塚泰之氏(コード委員長、流通適正化部会長)
➢参加者: 計82名(9社)
➢当日アンケート結果内容要旨(回答55名)
1 今回の研修は御社の今後の業務に参考になりそうでしょうか?
回答者55 名:はい(51名、93%)、いいえ(0名)、どちらとも言えない(4名、7%)
2 具体的にはどのような業務の参考になりそうでしょうか?(抜粋)
・「ガイドライン制定の課題、日漢協としての取り組みが必要となった課題など、分かりやすくご説明頂き有意義だった。審査に迷った時、元々の課題は何だったのか立ち返ることが重要なため、今後の業務の参考になると思った」(信頼性保証系)
・「日報の記載について。社内労務管理的な訪問管理の意味合いでの入力事項とは切り分けて公競規上の記載ルールを整理出来た」(営業系)
・「クリニック・薬局等での勉強会PPTの作成や、勉強会を行う際の表現で注意すべき場所が分かりました」(学術系)
・「情報提供活動に用いるスライド作成において、遵守すべきことが再確認できた」(学術系)
・「社内の製品情報概要審査会での審査業務」(安全管理系)
・「モニタリングの報告事例(漢方関連)を紹介いただいたこと、また他社情報についての提供のあり方を再認識できた。弊社MRにも再教育する」(開発系)
生薬会議
生薬委員会 委員長 山本 豊(株式会社栃本天海堂)
- 令和6年度 茶・薬用作物等地域特産作物体制強化促進事業について
- 生薬の価格調査(2006年を基準とした価格指数の推移)について
(1)薬用作物の産地化に向けた地域説明会および相談会
農水省の支援を受けた薬用作物産地支援協議会(一般社団法人全国農業改良普及支援協会と日漢協で設置した協議会:以下、薬産協という)の今年度の計画の「薬用作物の産地化に向けた地域説明会および相談会」(計3回,4日間/現地研修を含む)が予定通り終了した(7月26日:北海道、9月10日:東京都、10月3-4日:長野県)。
長野県での開催は、重点品目(カノコソウとシャクヤク)に関する研修会および説明会・相談会として開催された。初日の安曇野みらい農園での研修会には、生産団体や自治体、報道関係等29名が参加された。2日目は、松本市立博物館(1階講堂)において、現地参加またはオンライン参加によるハイブリッド形式により説明会が開催され、会場に17名、リモートで27名、計44名が参加された。これらの資料や動画の一部は、薬産協のホームページで公開しているので、確認していただきたい。
(2)薬用作物(生薬)産地化推進のための行政担当者情報交換会
薬産協の主催により11月29日に東京都(AP東京八重洲11階ROOM K)において、行政担当者を対象とした情報交換会がハイブリッドで開催された。
当日は、会場に12名、リモートで41名、計53名の参加者であった。
冒頭、農林水産省農産局果樹・茶グループ生産専門官の梶恵美先生が挨拶された後、3題の薬用作物栽培の取り組みが紹介された。
講演終了後の意見交換会(質疑応答を含む)では、薬用作物栽培を定着させるための前向きな取り組みや考え方が示された。
A.「北海道名寄市における薬用作物栽培振興の取り組みについて」北海道名寄市役所経済部農務課農業振興係係長 六郎田直人先生
B.「三豊市における薬用作物~持続可能な農業への取り組み~」香川県三豊市市長 山下昭史先生
C.「今、なぜ国内生薬の栽培か-東京生薬協会における薬用植物国内栽培の取り組み-」公益社団法人東京生薬協会専務理事 末次大作先生

中国産原料生薬の使用量上位30品目の価格指数の推移
会員会社を対象に中国産原料生薬の価格指数調査(第4回)を実施した。第1回~第3回調査と同様に2006年の購入価格を100 としたときの2017年、2020年および2023年の価格指数を調査した。調査対象生薬は、これまでの調査と整合性をとるため第1回調査と同じ中国から直接輸入している使用量上位30生薬とした。
調査の結果、2006年の価格を基準(100)としたとき、2017年の価格指数が233、2020年が219、2023年が295であった。これまでの調査最終年(2014年)の244以降、やや下降傾向が認められるものの2013年から2020 年がほぼ横ばい(213~244)で、直近の2023年は295(2006年の約3倍)と中国産原料生薬の価格が顕著に上がっていることが確認できた。調査の詳細は日漢協ホームページで公開している。
一般用漢方製剤会議
一般用漢方製剤委員会 委員長 高橋 隆二(クラシエ薬品株式会社)
- 一般用漢方製剤委員会
- 処方部会
- 適正使用推進部会
12月9日に幹事会を、12月17日に2024年度第2回委員会を開催し、理事会報告、各部会活動報告、各種プロジェクト報告等の情報共有を行った。
一般用漢方製剤承認基準への追加候補39処方に関し、委員会内で実施したアンケート結果をもとに、新たに追加希望のあった4処方および削除候補16処方につき部会員にて情報収集を継続している。
9月3日および11月11日に部会を開催した。確認票の裏面掲載商品の更新及び画像掲載について、全39処方の見直しを行い日漢協HP掲載のデータ差し替えを完了した。確認票の差し替えと同時に、同HPのレイアウト変更も実施し、漢方に興味をもった方に「確認票」および「鑑別シート」のメリットが伝わりやすくなるように記載順序・記載内容の一部修正を実施した。
また、部会にて第299回、第300回広告審査会ヒアリング結果の共有と意見交換を行った。
11月27日に文京シビックホールで開催された第27回市民公開漢方セミナーにおいて、会員会社より漢方製剤の空箱を提供いただき、漢方処方(補中益気湯・八味地黄丸)のパネルとともに展示し、漢方の普及活動を行った。
生薬製剤会議
生薬製剤委員会 委員長 和田 篤敬(小林製薬株式会社)


幹事会を10月11日に、委員会、制度研究部会と製剤開発部会の合同部会を11月22日に開催、当委員会の当面の間の運営様態について意見交換し、できるだけ活動に支障がないよう、常務理事とも相談しながら適宜対応することとしている。
国立衛研生薬部におけるガイドライン班のキックオフミーティングが9月25日に開催され、各業界団体からの参加者や議案等が紹介された。日漢協から参加の委員長4名で意見調整し、当委員会からは、AMED配合生薬班で検討してきた当帰川芎製剤(いわゆる婦人薬)の効能効果の見直しや処方開発ルールを含めた承認申請ガイドラインの整備を要望し、前向きに情報交換を進めている。
次の検討テーマとして生薬主薬保健薬(ニンジン主薬製剤)の範囲拡大の可能性について検討しており、関連学会等の機会に医学・薬学の先生方からいただいたご意見を踏まえて、範囲拡大の方向性を定め、制度研究部会と製剤開発部会で分担して臨床エビデンスの調査を進めている。
セルフメディケーション税制について、2022年1月から5年間延長され、対象品目はスイッチ成分配合品から、マオウ、ジリュウ、ナンテンジツを配合した漢方生薬製剤を含めた一部の非スイッチ成分配合品に拡大し、2025年1月までに対象品目数は下表のように毎年増加している。
一般薬連によるセルフメディケーション シンポジウムが11月6日に開催され、税制の恒久化(期間延長)や、対象品を全てのOTC医薬品に拡大すること等、税制改正への期待が語られた。
第27回市民公開漢方セミナー(11月27日/文京シビック小ホール)の会場ロビーにおいて、当委員会として会員会社16社の一般用漢方生薬製剤76製品のパッケージを展示して漢方生薬製剤の活用領域を紹介、ご来場の皆さまに興味を持って見ていただいた。
原薬エキス会議
原薬エキス委員会 委員長 佐々木 博(日本粉末薬品株式会社)
2024年10月23日と12月18日に、本年度第4回および第5回原薬エキス委員会を開催した。委員会では、日局の検討状況を共有化し、局外生規2026新規収載センナエキスの総センノシド含量規格等について検討を行った。また12月の委員会で、原薬エキス会議の2025年度事業方針および事業計画について検討した。
- 漢方処方エキスの日局収載
- 局外生規2026
昨年9月に麻子仁丸エキスの収載案がPMDAから意見募集された。麻子仁丸エキスは19局(2026年4月告示予定)で新規収載される。現在「漢方処方エキス班」(国立衛研の研究班)では、人参養栄湯エキスおよび麻黄附子細辛湯エキスの収載案が検討されている。
また、同班の要請で葛根湯など既収載40処方の漢方処方エキスについて、確認試験と定量法の改正要望が調査されている。
上記とは別に、ロートエキスなど日局生薬エキスの製法、特に原料生薬の切度について委員から改正要望があり、国立衛研に相談した上で局方連絡会と当委員会で作業を進める予定である。
昨年9月11日に局外生規2026第10回作成WG(座長:国立衛研伊藤生薬部長)が開催された。新収載センナエキスの総センノシド(センノシドA+B)の含量規格について、当委員会から実測値データまた局外規
2002センナエキスの規格(UV法)を考慮して、6.5~13.0%(HPLC法)を提案し了承された。
現在当委員会では、センナエキスの重金属添加回収率について検討中である。
国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョンプロジェクト
プロジェクトリーダー 味岡 賢士(株式会社ツムラ)
- 提言実現プロジェクト会議を10月22日に行い、研究会の内容、その他情報共有を行った。
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高校生を対象に、漢方にまつわる身近なエピソードを作文として応募する機会を通して、漢方の啓発を行うことを目的とし、日本薬科大学主催、漢方投稿企画(作文コンテスト)を実施した(日漢協協賛)。
合計6作品応募があり、「日漢協賞」について、アウトリーチチームを中心に厳正な審査を行った。結果は11月1日に日本薬科大学ホームページにて公表された。 -
「国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョン研究会」2024の内容等が決定し、下記の通り実施することとなった。
会 名 称:「 国民の健康と医療を担う漢方の将来ビジョン研究会」2024
開催日時: 2025年2月17日(月)18:00~20:00
会 場: KKR ホテル東京(10F 瑞宝)
テ ー マ:「 日本の社会課題と漢方薬の必要性」~高齢化(フレイル)少子化(プレコンセプション)~
共 催: 日本東洋医学会/日本漢方生薬製剤協会
総務委員会
委員長 永野 聡(株式会社ツムラ)
- 事業方針、事業計画、事業報告について
- 新規会員の入会促進について
- 講演会について
- コンプライアンスについて
- 環境活動について
第170回委員長会にて、2025年度の事業方針(案)・事業計画(案)の策定、2024年度事業報告の作成について説明し、各組織に依頼した。
第92回正副会長会において新規会員の入会促進に関する取り組みについて報告した。ターゲット会社の選定と送付資料を取りまとめ、11月よりダイレクトメールにて発送を開始した。
2024年9月20日第247回理事会後に厚労省医政局産情課 水谷由忠課長を招き、「医薬品産業の現状と課題」と題した日漢協講演会を開催した。参加会員会社数25社、参加人数90名(Web参加含む)であった。
会員会社のコンプライアンスの取り組みに関する実態を把握するため、10月1日より調査を実施した。白神誠先生(ファーマコエコノミクス研究会)に解析を依頼し、2025年3月理事会後に研修会を開催する。
日薬連環境委員会より、2023年のカーボンニュートラル行動計画および循環型社会形成自主行動計画の集計結果を委員会において共有した。引き続き環境部会において日薬連フォローアップ調査への参加依頼、環境の取り組みに関する実態調査の実施などを検討した。
広報委員会
委員長 北村 誠(株式会社ツムラ)

【会場の様子】

【講師の堀場裕子先生】
- 2024年日漢協訪中について
- 第27回市民公開漢方セミナー開催について
- プレスリリースについて
- 記事化について
2024年11月1日(金)から11月4日(日)の4日間、日漢協として6年ぶり6回目の訪中団を結成し、杭州市、蘭渓市、武義県を訪問し、中国医薬保健品進出口商会(医保商会)との交流会等に広報委員会より中浜副委員長が同行した。実施後、記事作成、訪中団報告冊子の作成等を行った。
第27回市民公開漢方セミナーを下記内容にて開催し、122名の一般市民に参加いただいた。講師の堀場裕子先生は、写真や実例を紹介しながら、一般の方々に非常にわかりやすく講演いただいた。
当日の講演概要は、日漢協トピックスに掲載、また収録動画は、現在日漢協のホームページにて公開中である。さらに、講演内容をまとめた小冊子を制作中である。
(1)日 時:2024年11月27日(水)18:30~20:00
(2)会 場:文京シビックホール小ホール(文京区)
(3)講 師:堀場 裕子先生(慶應義塾大学医学部 漢方医学センター 専任講師)
(4)テーマ:「あなたの不調に寄り添える漢方薬」~日常にありがちなイライラ、不安、不眠、めまい、頭痛、疲労感、冷え症など~
(1)10月28日 第27回市民公開漢方セミナー(11月27日開催)リリース
(2)11月14日 薬産協主催 行政担当者情報交換会(11月29日開催)リリース
10月3~4日、松本市で開催された「薬用作物重点品目(カノコソウ・シャクヤク)研修会・説明会・相談会」において下記の媒体に取材対応し、記事化された。
(1)日本農業新聞(森ちづる記者、10月3-4日連日記事化)
(2)医療タイムス社(坂下雪音記者、10月20日記事化)
(3)市民タイムス(板東和之記者、10月29日記事化)
国際委員会
委員長 小柳 裕和(株式会社ツムラ)
- ISO/TC249 関連活動について
- 2024年度訪中団報告について
WG1 WG2 会議への参加
1 2024年11月26日 第32回WG1
2 2024年11月27日 第28回WG2
日漢協から4名(浅間、山路、高杉、小柳)のエキスパートが出席
ISO/TC249 の各案件の進捗
2024年11月現在の、各開発段階における案件数は、以下に示すとおりである。WG1で43件、WG2では21件が国際規格として発行されており、全て購入済である。
個別に国際規格をご覧になりたい方は、クロジカにアクセスいただき、
フォルダー > 08 資料室 > ISO 規格書 > ★購入ISO一覧表20241210.xlsxのファイルを参照して必要な国際規格をご覧いただきたい。
日漢協として6年ぶり6回目の訪中団を結成し、2024年11月1日(金)から11月4日(日)の4日間、杭州市、蘭渓市、武義県を訪問し、中国医薬保健品進出口商会(医保商会)との交流会ならびに中薬関連会社・薬店の視察などを行った。
(1)日 程
2024年11月1日(金)~4日(月)
(2)訪問の概要
日中交流は、2019年に中国医薬保健品進出口商会(医保商会)の訪日以来、コロナ禍により途絶えていた。昨年より双方の間で交流再開を模索していたが、ようやく今回再開に向けた環境が整ったとの合意に至り、訪中が実現した。
訪日団は総勢14名で、以下のような行程により、杭州市、蘭渓市、武義県において視察ならびに交流を図った。
■11月1日(金) 杭州市における視察および交流
➢「胡慶餘堂」の視察
中薬を扱う老舗の大型薬店で中薬博物館を併設している。訪れた日漢協メンバーは、胡雪岩の三宝(金銀製薬工具、戒欺額、薬局額)や名医・名薬紹介および一万種類を越える薬草の展示、ならびに実際に調剤を行う場面など、興味深く見入っていた。
➢医保商会、業界団体、地元企業との交流・歓迎会
胡慶餘堂の見学後、医保商会、浙江省中薬材産業協会、同国貿集団の幹部の方々から歓迎のご挨拶を受けた後、加藤会長から感謝の意が述べられた。
その後、医保商会等が主催する歓迎会に招かれ、温かな歓待を受けた。一団は、各幹部や経営層の方々と終始和やかに歓談の時間を過ごし、交流を深めた。

【交流会の様子】

【交流会参加者 集合写真】
■11月2日(土) 医保商会との交流会および蘭渓市における視察・交流
➢医保商会との交流会
翌2日(土)、日漢協と医保商会等との交流会が開催された。
冒頭、加藤会長がご挨拶の言葉を述べた後、中国側から、医保商会副会長 孟 冬平様、続いて浙江省中薬材産業協会会長 李明焱様からご挨拶および取り組み等について説明を受けた。
その後、双方の代表者が下記の内容にて発表を行った。
・「日漢協の概要・「漢方の将来ビジョン2040」の紹介」(日漢協常務理事 町田吉夫氏)
・「日本の医療制度・漢方製剤等の現状」(日漢協保険薬価委員会 委員長 坂上誠氏)
・「中国における漢方情報の紹介」(日漢協国際委員会 委員長 小柳裕和氏)
・「中薬規範栽培GAPの進展状況」(中国医学科学院薬用植物研究所 副所長 魏建和様)
・「中国中薬材の市場動向」(中国医薬保健品進出口商会中薬部 主任 于志斌様)
発表終了後、記念品の交換が行われた後、双方の企業間で名刺交換等、交流の場が持たれた。
➢康恩貝 見学及び交流
午後からは、バスで蘭渓市に移動、中薬関連製造販売企業である康恩貝を訪問した。同社では、抽出および製剤工場を見学、最新の抽出設備により高品質な中成薬を製造している現場を視察した。訪中団一同、ご担当者の説明に耳を傾けつつ、同社の技術力の高さに感銘を受けていた。
見学および記念撮影の後、別室に移動し、意見交換の場が設定された。
先方からは、同社の叶剣峰副総裁 茫杰総経理が同社の概要等について説明された。協会側からは、草柳副会長などからご挨拶および先方への質問があり、有意義な情報交換の機会となった。会終了後、現地企業も含め、夕食会が開催され、日中の企業同士が積極的に情報交換を図った。最後は、協会より記念品の贈呈を行い、盛況の中、閉会した。
■11月3日(日) 武義県における視察・交流
➢寿仙谷の見学および交流会
訪中3日目となる3日(日)は、朝からバスで武義県に移動し、中薬関連原料の販売を行っている寿仙谷を訪問した。同社は、「寿仙谷万亩基地」において、菊花、霊芝、紅花など漢方薬原料の栽培・販売を行い、伝統的な漢方薬の完全なる産業チェーンを構築する国営ハイテク企業として、躍進を続けている。
一団は同社の栽培技術の先進性や巨大な経営規模に目を見張り、今後も発展を遂げるであろう、大きな将来性を感じ取った様子であった。見学終了後、李明焱会長をはじめ、同社の幹部の方々との交流会が開催された。先方よりあらためて概要の説明があった後、栃本天海堂の栃本大輔副会長より謝意が述べられた。その後は情報交換の時間が設けられ、有意義な意見交換が交わされた。
その後、会食の機会が持たれ、双方の親交を深めた。なお、最後は、小林誠二監事より同社に対して記念品の贈呈と中締めのご挨拶をいただいた。
■11月4日(月) 移動および帰国
(3)参加者
| 勤務先 | 役職 | 氏名 | 役職(勤務先) | |
|---|---|---|---|---|
| 1 | ㈱ツムラ | 会長 | 加藤 照和 | 代表取締役社長 |
| 2 | ㈱ツムラ | 保険薬価委員会委員長 | 坂上 誠 | 渉外調査室室長 |
| 3 | ㈱ツムラ | 国際委員会委員長 | 小柳 裕和 | 生薬本部 |
| 4 | ㈱ツムラ | 広報委員会副委員長 | 中浜 孝 | CC室 |
| 5 | クラシエ薬品㈱ | 副会長 | 草柳 徹哉 | 代表取締役社長 |
| 6 | クラシエ薬品㈱ | 薬制委員会委員長 | 栗田 宏一 | 薬品信頼性保証室室長 |
| 7 | クラシエ薬品㈱ | コード委員会委員長 | 松塚 泰之 | 薬品カンパニー企画部課長 |
| 8 | クラシエ薬品㈱ | 国際委員会副委員長 | 韓 青松 | 生薬エキス統括部部長 |
| 9 | ㈱栃本天海堂 | 副会長 | 栃本 大輔 | 代表取締役社長 |
| 10 | ㈱栃本天海堂 | 庄 妍 | 原料部 | |
| 11 | ジェーピーエス製薬㈱ | 監事 | 小林 誠二 | 会長 |
| 12 | ジェーピーエス製薬㈱ | コード委員会委員 | 相澤 誠 | 開発部課長 |
| 13 | 日本漢方生薬製剤協会 | 常務理事 | 町田 吉夫 | |
| 14 | 日本漢方生薬製剤協会 | 事務局長 | 栗村 芳之 |
薬制委員会
委員長 栗田 宏一(クラシエ薬品株式会社)
薬制委員会では薬事制度に関する事項、漢方・生薬製剤の関連法規及び関係通知の調査研究、関係行政機関及び諸団体との連絡並びに意見具申を基本に活動している。
- 令和6年度医薬品製造販売業等管理者講習会
- 医薬品の品質問題への対応について
毎年厚生労働省医薬局、独立行政法人医薬品医療機器総合機構と日薬連との共催で開催されている「医薬品製造販売業等管理者講習会」がオンデマンド配信にて開催された。
本年度の講習会は、ドラックラグ・ロス解消へ向けた薬事制度改革、リスクベースドアプローチの推進・RMP制度の見直し、医薬品の製造管理及び品質管理の強化・徹底といった内容を中心に厚生労働省及び医薬品医療機器総合機構の取組みに関する説明がなされた。
オンデマンド配信期間:令和6年11月5日(火)~令和6年11月29日(金)
「一般用医薬品の品質問題に係る自主点検」において承認書と製造実態の自主点検が実施され、令和6年5月16日に一般薬連より自主点検結果が公表された。その後、令和6年6月27日付け医薬薬審発0627第1号「要指導医薬品及び一般用医薬品並びに指定医薬部外品の製造販売承認書と製造実態の整合性に係る点検後の手続きについて」が発出され、点検後の薬事手続きについて示された。本通知に基づく薬事手続きについて一般薬連Web説明会(審査管理課、品質PJ)が9月に開催された。点検後の必要な手続きについて対応が確定した品目から遅滞なく行うよう説明があり、委員会でも対応徹底するよう依頼した。
技術委員会
委員長 高杉 泰弘(株式会社ツムラ)
2024年10月24日に2024年度第4回、2024年12月19日に第5回の委員会を開催した。局方や局外生規関連をはじめとする各部会の活動状況や日薬連品質常任委員会を通しての規制当局の動きや再構成されたAMED研究班活動の共有化、委員より寄せられた提言事項に対する議論を行った。
- 日局関連
- 技術品質部会関連
- 生薬品質部会関連
日局19改正および19局第一追補への収載に向け、麻子仁丸エキス、人参養栄湯エキスの試験法について継続して検討している。
日薬連品質常任委員会の情報共有に加え、PMDA Annual Report やオレンジレターの確認を行い、品質課題解決に関する取り組みの意識向上を図っている。
日漢協ホームページの生薬の解説「アロエ」の見直しを行っている。
安全性委員会
委員長 香取 征典(株式会社ツムラ)
●医療用医薬品添付文書新記載要領対応
医療用医薬品の添付文書新記載要領対応が昨年度完了となり、今年度からは「注意事項等情報」の内容について、医療用漢方製剤を対象とした業界統一冊子の20年ぶりとなる改訂作業を進めていく。安全性委員会参加会社の医療用漢方製剤の製造販売業者によるWG会合を10月に開催し、作業を開始しているところである。新記載要領対応版として改訂履歴の整理・関連通知の収集を実施しながら、問題・課題点の整理や変更骨子を検討し、これまでの注意喚起改訂根拠も含めながら、より分かりやすい掲載内容を目指した対応を進めていきたい。
また、添付文書に関連する資材についても、医療DXを踏まえた電子化や資料のありかた並びに見直しの検討が進められている。このような行政ならびに業界対応を委員会内で共有しながら適切に進めていきたい。
コード委員会
委員長 松塚 泰之(クラシエ薬品株式会社)
10月18日に委員会を開催した。
①11月実施のコード理解促進月間のテーマに関して議論した。
②製薬協コード管理責任者・実務担当者会の内容を情報共有した。
③一般薬連広告審査会の情報共有。
④令和5年度監視事業報告書の続報。
コード委員長が医療用漢方製剤委員会教育研修部会の要請で9月18日に講演を行なった。11月のコード理解促進月間に開始に伴ない文書を会員会社のコード管理責任者へ発出した。また、11月18日より製品情報概要審査部会が本年の資材審査を開始した。資材審査の中で課題等を抽出して作成上の留意点の改定も検討していく。
保険薬価委員会
委員長 坂上 誠(株式会社ツムラ)
保険薬価委員会は、10月8日、11月12日、12月10日、1月14日にWEB会議を開催した。
令和7年度中間年改定への動向に係る情報収集、対応準備および社会保障制度に係る議論など関係する関係審議会等の情報を共有した。
私の健康法 俳優 近藤正臣 さん
煙草を友に、我(われ)がままに

猫を傍らに紫煙を燻らす様も風雅このうえなく、
冬は薪ストーブで暖を取る。
「墓も戒名も坊さんもいらない」と死生観も潔い。
●「柔道一直線」を転機に
ピアノを足で弾くという離れ業を演じてお茶の間を沸かせ、一躍、時の人となった。以来、テレビ、映画、舞台など幾多の作品に出演し、名優の名をほしいままにしている。1942年(昭和17)2月15日、京都・祇園に生まれた。高校生の時に演劇に目覚め、京都府立洛東高校では演劇部に所属した。卒業後、家業の小料理屋の縁から大阪の高級料亭に修業に出されたが、性に合わないと3ヶ月で辞め、芝居で身を立てるべく劇団を立ち上げた。「芝居仲間だった同志社(大学)の劇研(演劇研究会)の舞台にも2、3回立っています。人が足りんからと誘われたのですが、皆くさい芝居をしていましたね」
その後、映画のエキストラなどで日銭を稼ぎながら日々を過ごした。映画デビューは23歳の時、今村昌平監督の『「エロ事師たち」人類学入門』、坂本スミ子の息子役だった。鳴かず飛ばずの日は以後も続いた。「役者で稼げるようになる前は麻雀で喰ってました。花札も強かった」。役者としての転機となったのが、1969年にテレビ放映された『柔道一直線』、28歳だった。
●川が好き、釣りが好き
俳優業が板につき、二枚目の売れっ子として名を馳せていた40代の頃、ドラマのロケで岐阜県の郡上八幡に赴き、その地を流れる日本三大清流の長良川の支流・吉田川の景色に惚れた。そこにはアナゴ、イワナ、アユをはじめサツキマスもいた。幼き頃の遊び場だった鴨川の姿が思い浮かんだ。やがて生来の川好き、釣り好きが昂じて吉田川沿いの一隅に別荘を建て、1年のうち4か月を暮らした。作家の開高健の「自然な川を一つくらい残せや」との声に呼応して長良川河口堰(三重県桑名市)の建設反対運動にも加わった。2017年(平成29)に東京を離れて移り住み、2025年(令和7)は郡上市民となり8年目を迎える。
●2秒で効いた芍薬甘草湯
間もなく83歳、小中高校の一学年下で、2023年に亡くなられた奥様のひろさんが飼っていたヤッコという名の男猫と共に暮らす。このところ腰と膝に支障があり、要介護1に認定され、ヘルパーが週2回訪れている。「48歳の時に腰の手術をし、一昨年にも3回目の手術をしました。川には入れなくなりましたが、釣り人を見ているだけでも和みます」無類の煙草好きでもあり、その逸話がふるっている。52歳の時、所属事務所から健康診断を受けるようにと言われて人間ドックに入ったところ、「肺気腫です。煙草を止めてくださいと言われ、友達を裏切られるか、一生吸ってやると決意しました」
愛飲しているのは「スピリッツ」、アメリカ産でインディアンの絵柄で知られている。2カートン単位で購入し、フィルターのつい先まで吸う。日に何本になるかは頓着しない。酒は飲まないというよりも飲めない性質で、食事は旬の物に拘る。薬は基本的にのまない主義だが、「最近、寝ていて足がつる時があり、主治医の勧めで芍薬甘草湯をのみました。漢方はじっくり効くと聞いていたのですが、2秒で効き、以来、太田胃散と一緒に常備しています」
郡上市の水清く豊かな自然を守るとともに「若者たちに落語の種をまきたい」と『郡上種まき寄席』を企画するなど地元文化の育みにも尽力されている。

