サイコ(柴胡)

江戸時代,全国的に生産されるようになったサイコは,静岡県三島が良質な柴胡の大集荷地であったため,ミシマサイコと呼ばれるようになった.近年になって野生のミシマサイコはほとんど消滅し,今日ではもっぱら栽培品が主である.

原植物

1. 原産地又は分布
関東地方以西,四国,九州
2. 植物形態
草丈40~70cm.根は肥厚し,黄褐色.茎は無毛で直立し,上部で分枝する.葉は互生し,広線形か線形で,長さ4~10cm,平行脈が数条あり,全縁で硬質.花期は8~10月.茎の複散形花序に黄色の小さな花を5~10個つける.分果は卵球形で無毛,長さ2.5~3.5cm.

生薬

1. 基原
ミシマサイコ Bupleurum falcatum Linné (セリ科 Umbelliferae) の根を乾燥したもの.
2. 産地
日本(静岡,宮崎,鹿児島,熊本,高知 等),中国(河北省,湖北省,安徽省等),韓国
3. 生薬の性状
本品は細長い円錐形 ~ 円柱形を呈し,単一又は分枝し,長さ10~20cm,径0.5~1.5cm,根頭には茎の基部を付けていることがある.外面は淡褐色 ~ 褐色で,深いしわがあるものもある.折りやすく,折面はやや繊維性である.横切面をルーペ視するとき,皮部の厚さは半径の1/3~1/2で,皮部にはしばしば接線方向に長い裂け目がある.
本品は特異なにおいがあり,味は僅かに苦い.
本品の横切片を鏡検するとき,皮層には径15~35µmの油道がやや多数散在する.木部には道管が放射状又はほぼ階段状に配列し,ところどころに繊維群がある.根頭部の髄には皮層と同様の油道がある.柔細胞中にはでんぷん粒及び油滴を認める.でんぷん粒は単粒又は複粒で,単粒の径は2~10µmである.
北柴胡(津柴胡)河北省産
柴胡(2年生)日本産
柴胡(1年生)日本産
4. 成分
トリテルペン系サポニン:サイコサポニン(saikosaponin) a~f などを含む
5. 日局18規格値
総サポニン
(サイコサポニンa 及びサイコサポニンd) 
0.35%以上
純度試験 (1)重金属 10ppm以下
(2)ヒ素   5ppm以下
(3)茎及び葉 茎及び葉10.0%以上を含まない
(4)異物   茎及び葉以外の異物1.0%以上を含まない
乾燥減量 12.5%以下(6時間)
灰分 6.5%以下
酸不溶性灰分 2.0%以下
エキス含量 希エタノールエキス 11.0%以上
6. 適用
消炎排膿薬,痔疾用薬,滋養強壮保健薬,精神神経用薬とみなされる処方等に配合されている.
7. 配合される主な漢方処方
乙字湯,加味帰脾湯,荊芥連翹湯,柴陥湯,柴胡桂枝湯,柴胡桂枝乾姜湯,柴胡清肝湯,柴胡加竜骨牡蛎湯,柴芍六君子湯,柴苓湯,滋陰至宝湯,四逆散,十味敗毒湯,小柴胡湯,加味逍遙散,神秘湯,大柴胡湯,竹茹温胆湯,補中益気湯,抑肝散 等

もっと知りたい

基原に関する事項

中国産の Bupleurum chinense DC.(マンシュウミシマサイコに基づく北柴胡)及び B.scorzonerifolium Willd.(ホソバミシマサイコに基づく南柴胡(紅柴胡))は Bupleurum falcatum Linnéの地域変種と考えられている.韓国産(植柴胡)の基原はミシマサイコである.

日本産

  • • 栽培品
    国内産:1年生のサイコサポニン含量は2年生に比べてやや高いが,形状的にはやや細い.2年生は1年生と比べ太いが,時に芯が木質化している場合がある.
  • • 野生品(主に静岡県三島地方に自生していたものが良品と言われた)
    現在は流通していない.過去流通していたものは外面が黄褐色で特有の香気が強く,繊維性ではなく,柔軟である.刻むと内側の色が淡黄色で油道が明確に認められた.特に褐色の油が滲み出るものが最高品とされていた.
  • • 九州柴胡
    九州地方で採れた野生品を総称した名称であり,現在は流通していない.

韓国産

サイコサポニン含量は日本産と比較して遜色ないが,生育条件の違いや水洗い,調製方法が悪く,一般的に日本産に劣るとされる.

中国産

  • • 日本産三島柴胡系統の栽培品
    日本産のものと形状的に大差はない.
  • • 南柴胡
    野生品であり,細いものが多く,やや柔軟性があり,サイコサポニン含量は比較的高い.
  • • 北柴胡
    野生品であり,遼寧省,河北省,河南省から産出される.南柴胡と比べると太く,外面は黒褐色で,繊維性が強い.中でも天津から輸出されるものを津柴胡と称するといわれている.

代表的な成分の構造式