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生薬の解説

カンゾウ (甘草)

下部には,ショ糖のおよそ150倍の甘味を有するといわれているグリチルリチン酸を多く含み,文字どおりの「甘い草」カンゾウは,洋の東西を問わず,紀元前から薬として用いられている.また,醤油や菓子,煙草などの甘味料としても大量に消費されている.

原植物

  1. 原産地又は分布

    中国東北部から,中央アジアおよび南ヨーロッパの乾燥地に分布する.

  2. 植物形態
    • ウラルカンゾウ(Glycyrrhiza uralensis Fisher)

      草丈30~80cm,時には1mにも達する.葉は互生し,長さ8~24cm,奇数羽状複葉で小葉は5~17枚,倒卵形から楕円形.6~7月に葉腋の総状花序に淡紫色の花を多数密生する.莢果は常に湾曲し,鎌刀状或いは環状を呈し,密に腺毛で被われている.

    • スペインカンゾウ(Glycyrrhiza glabra Linné)

      草丈60~90cm,葉は互生し,奇数羽状複葉で小葉は,9~17枚,楕円形~長楕円形,鈍頭,裏面は,小腺点を有し粘る.総状花序に淡青色の花を多数密生する.莢果はまっすぐ或いは微かに曲がり,無毛或いはまばらに柔毛がある.



ウラルカンゾウ


スペインカンゾウ

生薬

  1. 基原

    Glycyrrhiza uralensis Fisher Glycyrrhiza glabra Linné (マメ科 Leguminosae) の根及びストロンを乾燥したもので,時には周皮を除いたもの.

  2. 産地

    中国 (内蒙古自治区,甘粛省,陝西省,寧夏回族自治区,黒龍江省,吉林省,新彊ウイグル自治区等),アフガニスタン,オーストラリア,ロシア等

  3. 生薬の性状

    本品はほぼ円柱形を呈し,径0.5~3.0cm,長さ1m以上に及ぶ.外面は暗褐色~赤褐色で縦じわがあり,しばしば皮目,小芽及びりん片葉を付ける.周皮を除いたものは外面が淡黄色で繊維性である.横切面では,皮部と木部の境界がほぼ明らかで,放射状の構造を現し,しばしば放射状に裂け目がある.ストロンに基づくものでは髄を認めるが,根に基づくものではこれを認めない.
    本品は弱いにおいがあり,味は甘い.
    本品の横切片を鏡検するとき,黄褐色の多数のコルク層とその内層に1~3細胞層のコルク皮層がある.皮部には放射組織が退廃師部と交互に放射状に配し,師部には結晶細胞列で囲まれた厚壁で木化不十分な師部繊維がある.周皮を除いたものでは師部の一部を欠くものがある.木部には黄色で巨大な道管の列と3~10細胞列の放射組織が交互に放射状に配列する.道管は結晶細胞列で囲まれた木部繊維及び木部柔細胞を伴う.ストロンに基づくものでは柔細胞の髄がある.柔細胞はでんぷん粒を含み,また,しばしばシュウ酸カルシウムの単晶を含む.


東北甘草(2号)内蒙古自治区産


西北甘草(西正甘草・乙)内蒙古自治区産

  1. 成分

    トリテルペン配糖体:グリチルリチン酸 (glycyrrhizic acid) 等
    フラバノン配糖体:リクイリチン (liquiritin) 等

  2. 日局17 規格値

    グリチルリチン酸2.0%以上
    純度試験(1) 重金属 10ppm以下
    (2) ヒ素 5ppm以下
    (3) 総BHCの量及び総DDTの量 各々0.2ppm以下
    乾燥減量12.0%以下(6時間)
    灰分7.0%以下
    酸不溶性灰分2.0%以下
    エキス含量希エタノールエキス 25.0%以上

  3. 適用

    かぜ薬,解熱鎮痛消炎薬,鎮痛鎮痙薬,鎮咳去痰薬,健胃消化薬,止瀉整腸薬とみなされる処方に配合されている.

  4. 配合される主な漢方処方

    安中散,胃苓湯,黄耆建中湯,黄連湯,乙字湯,葛根湯,葛根湯加川芎辛夷,甘草湯,甘草瀉心湯,甘麦大棗湯,桔梗湯,帰耆建中湯,芎帰膠艾湯,響声破笛丸,杏蘇散,駆風解毒散(湯),荊芥連翹湯,桂枝加葛根湯,桂枝加芍薬湯,桂枝加芍薬大黄湯,桂枝湯,桂枝人参湯,桂麻各半湯,堅中湯,香砂平胃散,香砂養胃散,香砂六君子湯,香蘇散,五虎湯,五積散,柴陥湯,柴胡桂枝湯,柴胡清肝湯,柴芍六君子湯,滋陰降火湯,滋陰至宝湯,四逆散,四君子湯,治打撲一方,炙甘草湯,芍薬甘草湯,十味敗毒湯,潤腸湯,小建中湯,小柴胡湯,小青竜湯,升麻葛根湯,秦芁羗活湯,秦芁防風湯,清肺湯,蘇子降気湯,大黄甘草湯,竹茹温胆湯,調胃承気湯,桃核承気湯,当帰建中湯,当帰四逆湯,当帰四逆加呉茱萸生姜湯,独活葛根湯,二朮湯,人参湯,排膿湯,麦門冬湯,半夏瀉心湯,平胃散,加味平胃散,補中益気湯,麻黄湯,麻杏甘石湯,麻杏薏甘湯,薏苡仁湯,抑肝散,六君子湯,苓姜朮甘湯,苓桂朮甘湯 等

もっと知りたい

生薬の品質を五感で判断する方法
中国で流通するカンゾウには,大別して東北甘草,西北甘草の2種類がある.

  • 東北甘草は,根頭部からストロンが伸びる瘤状の部分を残して加工しているのが特徴である.根の先端に向けて次第に細くなり,外皮の色は赤黒く,剥がれ易く,断面は比較的粗であり,放射状のさけ目が顕著である.グリチルリチン酸含量が高く,甘味が強い.
  • 西北甘草は,内蒙古自治区西部にある杭錦旗周辺に産出する内蒙草と陝西省から甘粛省に産出する西北草に大別される.一般的に東北甘草と比べて外皮が剥がれにくく,断面には放射状の裂け目が少なく充実している.内蒙草を代表するものに中国で最優良品種とされてきた梁外草があり,質は充実しており,外皮の色は紫紅色で,内部はうすい黄色で粉性に富んでいる.通常,両端を切り揃えてあり,両端の太さは均一である.西鎮草(西正甘草)も内蒙草に含まれ,外皮の色は赤褐色で,通常,梁外草と同様に両端を切り揃えてある.一方,西北草は外皮の色が赤褐色から褐色で,内蒙草より粉性が少ない.通常,両端の太さは均一でなく,根の先端部で分枝するものが多い.ともに東北甘草と比べてグリチルリチン酸含量が低い傾向にある.


その他

  • 皮去り甘草は,外皮を剥いで乾燥したものである.色は薄い黄色で質は充実したものが多い.寧夏回族自治区,陜西省などで加工されたものが日本の市場で流通しているが流通量は少ない.
  • 新彊甘草と称されるものの中には,Glycyrrhiza inflata Batalin由来のものがあり,これらは日本薬局方の基原に適合せず,日局「カンゾウ」としては使用出来ない..ただし,日局「カンゾウエキス」および「カンゾウ粗エキス」の原料としては,他の規格さえ適合すれば,使用出来る.また成分抽出用として用いられる場合もある.
  • 等級としては,通常,太さによって,東北甘草は1・2・3・4号・混節に,西北甘草は甲・乙・丙・丁級・毛草などに分類される.


代表的な成分の構造式