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生薬の解説

ケイヒ (桂皮)

古代バビロニアのシュメール地方では,楔形(くさびがた)文字で書かれた粘土板が出土したり,古代エジプトの古文書にもその名が記されていたりとすることから,古来より,医薬品や香辛料として世界各地で消費されていたと思われる.日本へは8世紀頃,中国から遣唐使によりもたらされたものが,正倉院において桂心という名前で収蔵されている.

原植物

  1. 原産地又は分布

    中国南西部およびベトナム北部に分布する.

  2. 植物形態

    常緑高木.樹高10~17m.樹皮は灰褐色で芳香がある.葉は互生し,3本の明確な脈がみられ,長楕円形から広披針形で,長さ8~20cm.尖頭で全縁.基部は鈍形.花期は5~7月.枝端と葉腋に黄緑色の小さな花を円錐花序につける.黄緑色の小花が咲き,果実は楕円形か倒卵形で先端は截形,暗紫色に熟す.

生薬

  1. 基原

    Cinnamomum cassia Blume (クスノキ科 Lauraceae) の樹皮又は周皮の一部を除いて乾燥したもの.

  2. 産地

    中国 (広東省,広西壮族自治区),ベトナム

  3. 生薬の性状

    ベトナム桂皮

    本品は,通例,半管状又は巻き込んだ管状の皮片で,厚さ0.1~0.5cm,長さ5~50cm,径1.5~5cmである.外面は暗赤褐色を呈し,内面は赤褐色を呈し,平滑である.破折しやすく,切面はやや繊維性で赤褐色を呈し淡褐色の薄い層がある.
    本品は特異な芳香があり,味は甘く,辛く,後にやや粘液性で,僅かに収れん性である.
    本品の横切片を鏡検するとき,一次皮部と二次皮部はほとんど連続した石細胞環で区分され,環の外辺にはほぼ円形に結集した繊維束を伴い,環を構成する石細胞の細胞壁はしばしばU字形に肥厚する.二次皮部中には石細胞を認めず,まばらに少数の厚壁細胞を認める.柔組織中には油細胞,粘液細胞及びでんぷん粒を含む.放射組織中には微細なシュウ酸カルシウムの針晶を含む細胞がある.

  4. 成分

    精油 1~3 %:主な成分はシンナムアルデヒド (cinnamaldehyde),
    フェニルプロパノイド:(E)-ケイ皮酸 (cinnamic acid)

  5. 日局17 規格値

    純度試験総BHCの量及び総DDTの量  各々0.2ppm以下
    乾燥減量15.5%以下(6時間)
    灰分6.0%以下
    精油含量0.5mL/50.0g以上

  6. 適用

    かぜ薬,鎮痛鎮痙薬,解熱鎮痛消炎薬,動悸抑制薬,保健強壮薬,婦人薬,芳香性健胃薬とみなされる処方に高頻度で配合されている.

  7. 配合される主な漢方処方

    安中散,胃風湯,胃苓湯,茵陳五苓散,温経湯,黄耆建中湯,黄連湯,葛根湯,帰耆建中湯,桂枝湯,桂枝加葛根湯,桂枝加芍薬湯,桂枝加芍薬大黄湯,桂枝加朮附湯,桂枝加竜骨牡蛎湯,桂枝人参湯,桂枝茯苓丸,桂麻各半湯,堅中湯,牛膝散,五積散,五苓散,柴胡桂枝湯,柴胡桂枝乾姜湯,柴胡加竜骨牡蛎湯,柴苓湯,治打撲一方,炙甘草湯,十全大補湯,小建中湯,小青竜湯,折衝飲,桃核承気湯,当帰湯,当帰建中湯,当帰四逆湯,当帰四逆加呉茱萸生姜湯,独活葛根湯,女神湯,人参養栄湯,八味地黄丸,麻黄湯,薏苡仁湯,苓桂甘棗湯,苓桂朮甘湯 等

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生薬の品質を五感で判断する方法

  • 辛味が強く甘味があって渋味のないものが良品とされる.
  • ベトナム桂皮は広南桂皮に比べ,辛味が強い.
  • 極度に粘液性の強いものは品質が劣る.
  • 一般的には皮が厚いものが良い.ブロークン(折れ,砕けた品)は精油含量に注意を要する.


主なケイヒの種類
  1. 広南桂皮:広東省南西~広西壮族自治区東南部

    広西自治区の西江付近で栽培されており,最も生産量が多い.4~5年目で幹を切り,枝を取り,30cm程の長さにして皮を剥いだ上,乾燥したものである.

  2. 東興桂皮(東興桂通):広西壮族自治区南部

    7~8年以上の樹から採取したもので広南桂皮より皮が厚くて丸い管状をしている.精油含量も広南桂皮に比べ多い傾向がある.

  3. 油桂

    10年ほどの樹皮を採取したもので,東興桂皮より皮は厚く,長さ30~40cm,厚さ3~4㎜程の管状である.味も辛味が強く,精油含量は50g中に2mL程である.表皮のコルク層を剥いであるのが特徴である.

  4. 企辺桂皮(板桂)

    長さ50cm,幅15cm程,厚さ5mm程,板状もしくは両端が巻いた板状であり,両端が削られている.野生で20年程の樹皮を採取したものである.

  5. ベトナム桂皮:ベトナム北部~中部

    北部にYB(Yen Bai)桂皮,中部にQN(Quang Nam)桂皮やMN(Ming Nan)桂皮が産出される.ホールの等級はYB1(厚さ5~10mm),YB2(厚さ4~5mm),YB3(厚さ2~3mm)で,長さは40cmである.砕けた品(ブロークン)はYBV,QNVがある.精油含量が高く味も良い.しかし,最近,皮の厚みが薄くなっている傾向があり,精油含量も減少傾向にある.YB1,YB2は,灰分が高い傾向にある.

  6. 局方に適合しないケイヒ類
    • ジャワ桂皮・セイロン桂皮(Cinnamomum zeylanicum Nees)

      それぞれジャワ,セイロンから主に輸入されている.薬用には用いられず,専ら香辛料として用いられる.基原植物も薬用の桂皮とは異なる.甘味・辛味・があるが,渋味もある.ジャワ桂皮は噛むと粘着質である.外皮は通例剥がされている.

    • 日本桂皮(チリチリ)(Cinnamomum sieboldii Meisn)

      根皮を用いたもので,基原植物も薬用の桂皮とは異なる.現在は生薬としての流通はない.

    • 桂枝

      径1cm以下の細枝で,皮をつけたまま乾燥したもの.

    • ケイヨウヘイ(桂葉柄)

      桂樹の葉柄で,桂皮の代用品として用いられたこともあるが,主に,水蒸気蒸留を行い,精油(桂葉油)を得るために用いられる.


代表的な成分の構造式