生薬の解説
ケイヒ (桂皮)
古代バビロニアのシュメール地方では,楔形(くさびがた)文字で書かれた粘土板が出土したり,古代エジプトの古文書にもその名が記されていたりとすることから,古来より,医薬品や香辛料として世界各地で消費されていたと思われる.日本へは8世紀頃,中国から遣唐使によりもたらされたものが,正倉院において桂心という名前で収蔵されている.
原植物
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生薬
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生薬の品質を五感で判断する方法
- 辛味が強く甘味があって渋味のないものが良品とされる.
- ベトナム桂皮は広南桂皮に比べ,辛味が強い.
- 極度に粘液性の強いものは品質が劣る.
- 一般的には皮が厚いものが良い.ブロークン(折れ,砕けた品)は精油含量に注意を要する.
主なケイヒの種類
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広南桂皮:広東省南西~広西壮族自治区東南部
広西自治区の西江付近で栽培されており,最も生産量が多い.4~5年目で幹を切り,枝を取り,30cm程の長さにして皮を剥いだ上,乾燥したものである.
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東興桂皮(東興桂通):広西壮族自治区南部
7~8年以上の樹から採取したもので広南桂皮より皮が厚くて丸い管状をしている.精油含量も広南桂皮に比べ多い傾向がある.
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油桂
10年ほどの樹皮を採取したもので,東興桂皮より皮は厚く,長さ30~40cm,厚さ3~4㎜程の管状である.味も辛味が強く,精油含量は50g中に2mL程である.表皮のコルク層を剥いであるのが特徴である.
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企辺桂皮(板桂)
長さ50cm,幅15cm程,厚さ5mm程,板状もしくは両端が巻いた板状であり,両端が削られている.野生で20年程の樹皮を採取したものである.
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ベトナム桂皮:ベトナム北部~中部
北部にYB(Yen Bai)桂皮,中部にQN(Quang Nam)桂皮やMN(Ming Nan)桂皮が産出される.ホールの等級はYB1(厚さ5~10mm),YB2(厚さ4~5mm),YB3(厚さ2~3mm)で,長さは40cmである.砕けた品(ブロークン)はYBV,QNVがある.精油含量が高く味も良い.しかし,最近,皮の厚みが薄くなっている傾向があり,精油含量も減少傾向にある.YB1,YB2は,灰分が高い傾向にある.
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局方に適合しないケイヒ類
- ジャワ桂皮・セイロン桂皮(Cinnamomum zeylanicum Nees)
それぞれジャワ,セイロンから主に輸入されている.薬用には用いられず,専ら香辛料として用いられる.基原植物も薬用の桂皮とは異なる.甘味・辛味・があるが,渋味もある.ジャワ桂皮は噛むと粘着質である.外皮は通例剥がされている.
- 日本桂皮(チリチリ)(Cinnamomum sieboldii Meisn)
根皮を用いたもので,基原植物も薬用の桂皮とは異なる.現在は生薬としての流通はない.
- 桂枝
径1cm以下の細枝で,皮をつけたまま乾燥したもの.
- ケイヨウヘイ(桂葉柄)
桂樹の葉柄で,桂皮の代用品として用いられたこともあるが,主に,水蒸気蒸留を行い,精油(桂葉油)を得るために用いられる.
- ジャワ桂皮・セイロン桂皮(Cinnamomum zeylanicum Nees)
代表的な成分の構造式