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生薬の解説

タイソウ (大棗)

 ナツメの果実を乾燥したものが大棗で,ナツメは,桃・栗・杏・李(すもも)と並んで,中国では五果と呼ばれて珍重されてきた.ナツメの熟した果実は甘酸っぱくわずかに青リンゴのような味である.日本には奈良時代に渡来し,平安時代に盛んに栽培されるようになった.「万葉集」にも詠われ,宮中の儀式や諸制度などを記した「延儀式」(927年)には,信濃,丹後,因幡などから乾棗(ほしなつめ)が献上されていたという記載がみられる.
 ナツメという名前の由来にはいくつかの説があり,中でも初夏になってようやく芽が出ることから夏芽とする説が有力である.また,茶器の棗に似ているのでナツメと呼ぶのではなく,果実のナツメに似ているので,茶器に「棗」と呼び名がついたと思われる.

原植物

  1. 原産地又は分布

    ヨーロッパ南部,アジア南西部

  2. 植物形態

    落葉性の小高木又は低木で高さ10 mに達する.葉は互生,卵形~長卵形で長さ2~4cm,葉先はにぶく尖り葉脚は円形で多少左右非相称.質は薄いが硬く,光沢があり,3脈が明瞭である.托葉はしばしば刺針に変わる.短い集散花序を腋生及び頂生し,淡緑色の小花をつける.花は径約5 mm,花弁は反曲する.核果は楕円形~球形で長さ1.5~3cm,表面はなめらかで,黄褐色~紅熟する.花期4~5月.果期9~10月.

生薬

  1. 基原

    ナツメ Ziziphus jujuba Miller var. inermis Rehder(クロウメモドキ科 Rhamnaceae)の果実である.

  2. 産地

    中国(河南省,山東省,河北省,山西省,陝西省)

  3. 生薬の性状

    本品は楕円球形又は広卵形を呈し,長さ2~3cm,径1~2cmである.外面は赤褐色で粗いしわがあるか,又は暗灰赤色で細かいしわがあり,いずれも艶がある.両端はややくぼみ,一端に花柱の跡,他端に果柄の跡がある.外果皮は薄く革質で,中果皮は厚く暗灰褐色を呈し,海綿様で柔らかく,粘着性があり,内果皮は極めて堅く紡錘形で,2室に分かれる.種子は卵円形で扁平である.
    本品は弱い特異なにおいがあり,味は甘い.

  4. 主な成分

    サイクリックAMP
    サポニン:Zizyphus saponinⅠ~Ⅲ
    トリテルペノイド:オレアノール酸,ベツリン酸,マスリン酸
    3-O-trans-p-coumaroyl alphitic acid,3-O-cis-p-coumaroyl alphitic acid
    糖類:フルクトース,スクロース,グルコース,zizyphus-arabinan

  5. 日局18規格値

    純度試験(1) 変敗 不快な又は変敗したにおい及び味がない
    (2) 総BHCの量及び総DDTの量 各々0.2ppm以下
    灰分3.0%以下

  6. 適用

    かぜ薬,鎮痛鎮痙薬,健胃消化薬,止瀉整腸薬,精神神経用薬とみなされる処方及びその他の処方に高頻度で配合される.

  7. 配合される主な漢方処方

    加味温胆湯,黄耆建中湯,黄連湯,藿香正気散,葛根湯,甘草瀉心湯,甘麦大棗湯,帰耆建中湯,帰脾湯,加味帰脾湯,桂枝湯,桂枝加葛根湯,桂枝加芍薬湯,桂枝加芍薬大黄湯,桂枝加朮附湯,桂枝加竜骨牡蠣湯,桂麻各半湯,堅中湯,呉茱萸湯,柴陥湯,柴胡加竜骨牡蠣湯,柴胡桂枝湯,炙甘草湯,生姜瀉心湯,小建中湯,小柴胡湯,小柴胡湯加桔梗石膏,参蘇飲,清肺湯,蘇子降気湯,大柴胡湯,当帰建中湯,当帰四逆湯,当帰四逆加呉茱萸生姜湯,排膿湯,麦門冬湯,半夏瀉心湯,防已黄耆湯,補中益気湯,六君子湯,苓桂甘棗湯 等

もっと知りたい

生薬の品質を五感で判断する方法

 生薬としての使用は外形が大きく,紫紅色で中果皮の果肉が厚く,果核は小さく,味は甘く,咀嚼して粘液性に富み,潤いを持つものを良品とする.


加工方法

 ナツメの果実を秋口の完熟前のやや赤めのうちに採取し,天日乾燥する.又は軽く蒸す,あるいは湯通しして乾燥する.この調製は,果実を乾燥しやすくするのと,付いている虫を殺す為(もともと虫が付き易い)である.


ナツメの用途及び種類

①食品用として烏棗と紅棗があり,烏棗は煮て燻製し,黒くなっている.紅棗は小粒で,俵型で細長く,種子は小さく,果肉が多い.甘味が強く,食品として多く使われている.

②薬用として使用されている中国産は,広卵形と楕円形のものがある.広卵形のものは山東省産で大泡棗と呼ばれ,粒が大きく,果肉が多く,糖質が多く,傷みやすい.楕円形のものは河南省産で大灰棗と呼ばれ,比較的糖質及び粘り気が少なく,傷みにくい.


保管における注意点

 大棗は保存の難しい生薬であり,刻んでも餅のようにくっついてしまうことがある.また,普通内部が白っぽいが,ベトついたものは黒っぽくなり,飴色で餅状になるため,温度,湿度の管理が重要である.


産地による特徴

日本産のナツメの果実は概して果肉が薄く,甘味がやや弱く,わずかに酸味がある.中国産は果肉が厚く種子が小さく,味は甘く酸味が少ない.


代表的な成分の構造式

マスリン酸


Zizyphus saponinⅡ