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漢方製剤・生薬製剤・生薬用語の英語表記
Recommended Terminology for Kampo Products,Conventional Crude Drug Products and Crude Drugs

III. 漢方製剤・生薬製剤・生薬関連用語 その1 >>III. 漢方製剤・生薬製剤・生薬関連用語 その2


伝統薬/traditional medicines, traditional drugs
伝統医学(traditional medicine) で使用される薬物の総称。

漢方薬/Kampo medicines
漢方医学(Kampo medicine) で用いる薬剤全体を概念的に広く表現したい場合に用いる言葉。 漢方医学と誤解される可能性があるため、個別の物質を指す場合には Kampo preparationKampo formulationKampo product など、より具体的で正確な表現を用いるべきである。 なお、漢方薬の原料は植物だけと限らないため、 Japanese herbal medicines という注釈は適切ではない。 漢方薬を解説する場合には、まず日本の伝統医学(traditional Japanese medicine) である 漢方医学に触れてから説明を加えるとよい。「漢方医学」の項も参照のこと。

和漢薬/Wakan-yaku
日本で用いられている伝統薬の総称を示す場合に用いる。もともとは日本、 中国で用いられる生薬を指していたが、現在は漢方薬も含めた広い意味で 用いられている。

民間薬/folk medicine, indigenous medicine, indigenous drug
経験的に民間で使用される伝統的な薬物。体系化されていない。 日本ではセンブリなどがこのカテゴリーに含まれる。 総称で使う場合には複数形にする。

中薬/traditional Chinese medicine
中医学で用いる薬剤。漢方医学のもとになった古典的な薬剤から、 近年の新しい処方(合成薬を含まない)までを含む広い概念を示す言葉。 総称で使う場合には複数形にする。 traditional Chinese medicine は中医学の意味でも用いるので、 「中医学」の項も参照のこと。

中成薬/traditional Chinese medicinal product
中薬を工業的方法で製剤化した薬物を示すときに用いる。

植物薬/herbal medicine, herbal drug, botanical medicine, botanical drug, plant medicine, plant drug
「植物薬」といった表現は、欧米の "herbal medicine" といった言葉の日本語訳のため、 漢方薬などの日本国内の製品を表現する際にはなるべく用いない方がよい。 herbal medicines は植物薬全体を指す最も広い表現で、 herb (raw materials) そのものから、原料 (herbal materials) 、中間製品 (herbal preparations) 、最終製品 (finished herbal products) までを含む。 herbal materials には精油や herb のフレッシュジュースも含む。 植物製品をさす場合には herbal product、生薬をさす場合には herbal drug などと、欧州的表現では使い分ける必要がある。 薬の意味で medicine を使う場合には医学と誤解されないような注意が必要である。 なお、漢方薬は鉱物性や動物性の生薬を含む場合があり、 厳密には漢方薬イコール植物薬とはならない。

植物性医薬品/herbal medicinal product, botanical drug product
活性物質として植物性原薬のみを含む医薬品(最終製品)を示す場合に用いる。 鉱物性生薬や、動物性生薬を含む場合には用いない方がよい。 植物性以外の生薬や、合成薬が入っていることを表現したい場合には、 finished herbal product を用いる。欧州では herbal medicinal product、米国では botanical drug product を用いた方が理解されやすい。

配合剤/combination drug
化学医薬品では有効成分を2つ以上含む医薬品のことを言う。 医薬品添加物有効成分には含まない。

新薬/modern medicine
伝統薬の対比語になるが、この言葉は現代医学という意味に 解釈される可能性もあるので注意が必要である。 一方、 new drug という表現は、医薬品の規制現場では申請中の承認前薬物という意味が強く、 伝統薬の対比語としては不適当である。

化学医薬品/chemical drug
単一の化学物質、あるいはそれらの混合物を有効成分とする医薬品を示す場合に用いる。

合成医薬品/synthetic drug
化学合成により製造される医薬品。試薬などの非医薬品は別の概念であり、 chemical reagent と表現する。

処方箋薬/prescription drug, prescription medicine
医師の診断に基づき処方される医薬品を示す。 わが国の薬事法では、処方箋薬は医師の処方箋なしに販売することが禁じられている。 漢方製剤医療用一般用とも処方箋薬には分類されていない。

非処方箋薬/non-prescription drug, non-prescription medicine
医師の処方箋なしに購入できる医薬品を示す。 わが国の薬事法では、非処方箋薬という分類はなく、 処方箋薬以外の医薬品を指す通称として用いられる。 漢方製剤医療用であっても 処方箋薬には分類されていない。

薬価収載医薬品/NHI price listing drug
NHI は National Health Insurance の省略形。

自家製剤/in-house formulation
工業的に製造された製剤の対語。家庭で製するもの、 薬局で製するものがある。薬局で製するものは in-pharmacy formulation(薬局製剤) と表現する。

薬局製剤/in-pharmacy formulation
自家製剤の一つ。病院薬局であれば in-hospital formulation としてもよい。

丸料/…ganryo
丸剤である漢方薬を湯剤として用いたことを示す処方名の一部。 例えば、八味地黄丸は、本来は生薬を抽出することなく丸剤にしたものであるが、 八味地黄丸料は八味地黄丸の構成生薬から作成した湯剤である。 漢方エキス製剤は八味地黄丸という名前であっても、正確には 八味地黄丸料のエキス製剤であり、 extract based on hachimijiogan formula である。

散料/…sanryo
散剤である漢方薬を湯剤として用いたことを示す処方名の一部。 例えば。当帰芍薬散は。本来は生薬を抽出することなく散剤にしたものであるが、 当帰芍薬散料は当帰芍薬散の構成生薬から作成した湯剤である。 漢方エキス製剤は当帰芍薬散という名前であっても、 正確には当帰芍薬散料のエキス製剤であり、 extract based on tokishakuyakusan formula である。

構成生薬/component
Component は構成要素という意味で、最も普通に用いられる言葉である。
「漢方処方」 (Kampo formula) においては、 構成要素は配合される個々の生薬であることから、 "Pueraria root is a component of a kakkonto formula. " のように用いる。 "Pueraria root is a crude-drug component of a kakkonto formula." とすると、さらに明確な表現となる。
一方、「漢方エキス製剤」 (Kampo preparationKampo formulationKampo product) の構成要素は生薬ではなく、 通常、「エキス」 (bulk extract) であり、生薬を 「漢方エキス製剤」の component と表現することはできない。なお、 エキス製剤ではない、生薬末を混合した八味地黄丸の「丸剤」のような場合には "Rehmannia root is a component of a hachimijiogan product." と言うことはできる。
構成要素としての化学成分を示す場合は、「構成(化学)成分」の項を参照。