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生薬の解説

ハンゲ (半夏)

 基原植物のカラスビシャクは,東アジア各地に自生するサトイモ科の多年草で,畑や山地の道端に雑草として普通に見られる.
 カラスビシャクは,ウラシマソウやマムシグサを小さくしたような仏炎苞がある.カラスビシャクの別名ヘソクリは,昔,農家の年寄や主婦が,畑のカラスビシャクの塊茎を集めて売って,ヘソクリにしたからと言う説や,ひげ根を除いた塊茎は,いかにもおへそをくり抜いたような形をしているからという説がある.
 半夏とは,暦の雑節の一つで,夏至から11日目(7月2日頃)の「半夏(半夏生)」の頃にカラスビシャクが生えるので「半夏」と呼んだとも,逆にカラスビシャクが「半夏」と呼ばれたのが先で,「半夏生じる」時節ということで「半夏」という名称ができたという説もある.

原植物

  1. 原産地又は分布

    中国,朝鮮半島および日本

  2. 植物形態

    多年生草本.塊茎は円球形,径1 ~2cm.葉は2~5枚,葉柄の長さ15~20cm,葉柄下部及び葉身基部に径3~5mmの珠芽がある.幼苗の葉身卵状心形,全縁の単葉で,長さ2~ 3cm.老株の葉身は3全裂,裂片は長円状楕円形~披針形,中央裂片は長さ3~10cm,側裂片はやや短い.全縁あるいは不明瞭な浅波状円歯.花序柄の長さ25~30cm.仏炎苞は緑色あるいは緑白色で長さ6~7cm.管部は狭円形で長さ1.5~2cm.舷部は披針形でやや円頭,上方に内湾.肉穂花序の雌花序は長さ2cm.雄花序は5~7mm.その中間隔は3mm.付属器は緑色で青紫色に変わり,長さ6~10cm,直立し,ときにS字形に湾曲.液果は卵円形で小さく,黄緑色.花期5~7月,果実8月に成熟.

生薬

  1. 基原

    カラスビシャク Pinellia ternata Breitenbach(サトイモ科 Araceae)のコルク層を除いた塊茎である.

  2. 産地

    中国(四川省,湖北省,安徽省,江蘇省,雲南省,貴州省,山東省等)

  3. 生薬の性状

     本品はやや扁圧された球形~不整形を呈し,径0.7~2.5cm,高さ0.7~1.5cmである.外面は白色~灰白黄色で,上部には茎の跡がくぼみとなり,その周辺には根の跡がくぼんだ細点となっている.質は充実する.切面は白色,粉性である.
     本品はほとんどにおいがなく,味は初めなく,やや粘液性で,後に強いえぐ味を残す.
     本品の横切片を鏡検するとき,主としてでんぷん粒を充満した柔組織からなり,僅かにシュウ酸カルシウムの束針晶を含む粘液細胞が認められる.でんぷん粒は主として2~3個の複粒で,通例,径10~15μm,単粒は,通例,径3~7μmである.シュウ酸カルシウムの束針晶は長さ25~150μmである.

  1. 成分

    フェノール類:3,4-dihydroxy benzaldehyde diglucoside,homogentisic acid
    アミノ酸類:choline
    その他:β-sitoseteryl-β-D-glucosideguanosine,ephedrine,水溶性多糖類,

  2. 日局18規格値

    純度試験(1) 重金属 10ppm以下
    (2) ヒ素 5ppm以下
    (3) Arisaema属植物及びその他の根茎
      本品を鏡検するとき,皮部の外層に粘液道を認めない.
    乾燥減量14.0%以下(6時間)
    灰分3.5%以下

  3. 適用

    漢方処方用薬である.健胃消化薬,鎮吐薬,鎮咳去痰薬とみなされる処方及びその他の処方に比較的高頻度で配合されている.

  4. 配合される主な漢方処方

    温経湯,加味温胆湯,黄連湯,藿香正気散,甘草瀉心湯,堅中湯,香砂六君子湯,五積散,柴陥湯,柴苓湯,柴胡加竜骨牡蠣湯,柴胡桂枝湯,柴芍六君子湯,生姜瀉心湯,小柴胡湯,小青竜湯,小半夏加茯苓湯,参蘇飲,清湿化痰湯,蘇子降気湯,大柴胡湯,竹茹温胆湯,当帰湯,二朮湯,二陳湯,麦門冬湯,半夏厚朴湯,半夏瀉心湯,半夏白朮天麻湯,六君子湯 等

もっと知りたい

生薬の品質を五感で判断する方法

 粒が大きく,外面純白色で,質が充実したものが良い.
 コルク層がよく剥けており,色の白い品が良品とされているが,年数の経過と共に灰褐色に変色する.
 本品の特長はその上部にくぼみがあること,また,径により高さの方が短いことであり,水半夏との区別点でもある.


成分解説

 ハンゲの味は「えぐ味」と描写されるが,未加工の半夏を口にしようものなら「えぐ味」などという生易しいものではない,強烈な舌や喉の痛みに苦しむことになる.この強烈なえぐ味の原因の一つは,3,4ジヒドロキシベンズアルデヒドの配糖体.もっとも,このえぐ味の強いものの方が良品とされる.もし,口にしたなら,ショウガ(生姜)をかじると多少解消される.成分中のシュウ酸カルシウムの針晶も,えぐ味の原因とされる.


類似生薬

 フェノール性化合物のペオノールと,その配糖体であるpaeonolideとpaeonosideが特有のものとして知られている.


類似生薬

 形状が類似するものに中国産の水半夏と称するものがある.これは,Typhonium flageliforme Blume(Araceae)の塊茎で,半夏特有の凹入した残茎基もなく,輪節様のしわがあること,淡褐色~赤褐色の斑点があること,および内部構造上では,タンニン様物質を含む細胞が存在することなどで判別できる.
 また,Pinellia pedatisecta(掌葉半夏)は柔細胞の大きさの違い以外でも,粘液細胞の大きさについても市場半夏が径75~150μmに対し,掌葉半夏では50~118μmと小さい.したがって両種共に半夏と区別され,局方には該当しない.


掌葉ハンゲ=虎掌ハンゲ(Pinellia pedatisecta


その他

 また,ドクダミ科のハンゲショウも,「半夏」の時期に花が咲くので「ハンゲショウ」になったという説もある.

香港市場では普通の半夏のほか,小形のものを集めて「珍珠半夏」,大形のものを「大玉半夏」と称しているが,「大玉半夏」には日局品と基原を異にするもの(Pinellia tripartita Schott)がある.

代表的な成分の構造式

3,4-dihydroxy benzaldehyde diglucoside


homogentisic acid