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生薬の解説

ハッカ (薄荷)

 薬用や香料用に栽培される多年生草本である.かつてはやや湿った原野,川の土手,田畑の畦に自生していた.特有の芳香があり,芳香性健胃薬として用いられる.日本にも古くに渡来し,『大和本草』に栽植の記録がみられることから,18世紀初頭には栽培されていたと思われる.
 ギリシャ神話に登場する冥界の王ハーデスの寵愛を受けた妖精ミンタが,ハーデスの妻ペルセポネの不興を買い,呪いをかけられて,雑草に変えられてしまった.これを哀れんだハーデスが,清涼感のある香りを放つハーブに変えたという逸話から,このハーブをミンタと呼ぶようになったと言われ,ミントの語源とされている.

原植物

  1. 原産地又は分布

    日本各地および東アジア

  2. 植物形態

    草丈20~40cm.茎は直立し丈夫でまばらに分枝し,四稜形で軟毛がある.葉は対生し,狭卵形から長楕円形で長さ2~5cm,鋭頭で鋭鋸歯縁.花期は8~10月.葉腋に短柄のある淡紫色の唇形の小さな花を多数密につける.

生薬

  1. 基原

    ハッカ Mentha arvensis Linné var. piperascens Malinvaud(シソ科 Labiatae)の地上部を乾燥したもの.

  2. 産地

    中国 (江蘇省,浙江省,江西省 等) ,日本(北海道,新潟 等)

  3. 生薬の性状

    本品は茎及びそれに対生する葉からなり,茎は方柱形で淡褐色~赤紫色を呈し,細毛がある.水に浸してしわを伸ばすと,葉は卵円形~長楕円形で,両端はとがり,長さ2~8cm,幅1~2.5cm,辺縁に不ぞろいの鋸歯があり,上面は淡褐黄色~淡緑黄色,下面は淡緑色~淡緑黄色を呈する.葉柄は長さ0.3~1cmである.ルーペ視するとき,毛,腺毛及び腺りんを認める.
    本品は特異な芳香があり,口に含むと清涼感がある.

  4. 主な成分

    精油:主成分は,l-メンソール,1-メントン,l-リモネン

  5. 日局18規格値

    純度試験異物 本品は根及びその他の異物2.0%以上を含まない
    乾燥減量15.0%以下(6時間)
    灰分12.0%以下
    酸不溶性灰分2.5%以下
    精油含量0.4mL/50.0g以上

  6. 適用

    漢方処方用薬としては,精神神経用薬,消炎排膿薬とみなされる処方及びその他の処方に少数例配合されている.

  7. 配合される主な漢方処方

    響声破笛丸,荊芥連翹湯,柴胡清肝湯,滋陰至宝湯,加味逍遙散,清上防風湯,川茶調散,防風通聖散 等

もっと知りたい

生薬の品質を五感で判断する方法

 質は脆く,葉を揉むとメントールのすがすがしい匂いがあり,味は辛くて清涼感がある.葉が多く,匂いと味が強いものが良品とされる.


採収・加工

 夏および秋の茎や葉が茂る頃または花が3輪まで咲く頃,晴れた日に,数回に分けて刈取り,日干しまたは陰干しにする.


ハッカ油

 ハッカ油は Mentha arvensis Linné var. piperascens Malinvaud(Labiatae)の地上部を水蒸気蒸留して得た油を冷却し,固形分を除去した精油であり,香料,清涼剤として,食品,化粧品などに広く利用される.


その他

  • セイヨウハッカ Mentha piperita HUDS.
    ペパーミント.精油は,菓子,リキュール,歯磨き材等に配合される.医薬品としては駆風,利胆効果が期待されると言われている.
  • ミドリハッカ M. spicata L.
    スペアミント.ヨーロッパ原産.carvoneを主とする精油は,香料や香辛料など,食品の添加物として使用される.駆風効果が期待されると言われている.
  • メグサハッカ M. pulegium L.
    ペニーロイヤルミント.ヨーロッパで食習慣はあるものの,肝毒性のあるd-Pulegoneを含有することから,飲食用及び内服薬用としては推奨できない.

d-Pulegoneを主とする精油をペニーローヤルオイル(別名:ポレイ油)といい虫避け剤や化粧品原料として使用される.ペニーロイヤルオイルも流産を引き起こす作用を有することから,妊娠中および授乳時には外用としても使用は避けるべきである.


代表的な成分の構造式

1-Menthol


d-Pulegone