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生薬の解説

マオウ (麻黄)

 神農本草経の中品に収録され,その薬能は「中風,傷寒,頭痛,温瘧には表を発し汗を出すを主どる.邪熱の気を去り,欬逆上気を止め,寒熱を除き,癥堅ちょうけん積聚しゃくじゅを破る」と記載されている.現在でも漢方の要薬である.含有成分であるエフェドリン長井長義博士により発見され,その薬効についてもわが国で明らかにされた注目すべき生薬の一つである.
 マオウ科はマオウ属のみからなる.アジア,ヨーロッパ,北アフリカ,南北アメリカの乾燥地に広く分布.日本に自生はしない.

原植物

  1. 原産地又は分布

    中国,モンゴル,インド,パキスタン,ロシア,東ヨーロッパの乾燥地帯

  2. 植物形態

    Ephedra sinica Stapf <中国:草麻黄>
    樹高30~70cm.根茎は木質で厚く屈曲する.茎は細長く分枝してやや扁平で多節.葉は細かい鱗片状で節に対生し,基部は合体し,苞茎して鞘状になる.花期は夏.茎先か鞘端に小形の花序をつけ,雌雄異株.雌花は熟すと紅色肉質になり,堅火は黒褐色で長卵形.

    E.intermedia Schrenk et C.A.Meyer <中国名:中麻黄>
    低木で,高さ1mに達する.節間は長さ3~ 6cm,径2mm以上.葉は3片が輪生,その基部約2/3が合生し,裂片は短く,三角形.

    E. equisetina Bunge <中国名:木賊麻黄>
    木質茎は直立して高さ0.8~1.5m.木質茎から草質茎をそう生する.草質茎は径1~1.5mm,節間の長さ1~3.5cm,葉は2枚で基部で合着し筒状.雌雄異株.花期は5月.雄花序は単生か,または3~4個集まって節につく.

生薬

  1. 基原

    Ephedra sinica Stapf, Ephedra intermedia Schrenk et C. A. Meyer又はEphedra equisetina Bunge(マオウ科 Ephedraceae)の地上茎である.

  2. 産地

    中国(内蒙古自治区等),モンゴル

  3. 生薬の性状

     本品は細い円柱状~楕円柱状を呈し,径0.1~0.2cm,節間の長さ3~5cm,淡緑色~黄緑色である.外面に多数の平行する縦溝があり,節部には鱗片状の葉がある.葉は長さ0.2~0.4cm,淡褐色~褐色で,通例,対生し,その基部は合着して,筒状になっている.茎の横切面をルーペ視するとき,円形~楕円形で,周辺部は灰緑色~黄緑色を呈し,中心部は赤紫色の物質を充満するか又は中空である.節間部を折るとき,折面の周辺部は繊維性で,縦に裂けやすい.
     本品は僅かににおいがあり,味は渋くて僅かに苦く,やや麻痺性である.

  4. 主な成分

    アルカロイド:エフェドリン,プソイドエフェドリン,ノルエフェドリン,N-メチルエフェドリン,N-メチルプソイドエフェドリン,ノルプソイドエフェドリン
    フラボノイド,タンニン

  5. 日局18規格値

    総アルカロイド
    (エフェドリン及びプソイドエフェドリン)
    0.7%以上
    純度試験(1) 木質茎 本植物の木質茎5.0%以上を含まない
    (2) 異物 木質茎以外の異物1.0%以上を含まない
    乾燥減量12.5%以下(6時間)
    灰分11.0%以下
    酸不溶性灰分2.0%以下

  6. 適用

    漢方処方用薬であり,鎮咳去痰薬,気管支拡張薬,鼻炎用薬,解熱鎮痛消炎薬とみなされる処方及びその他の処方に配合されている.また,エキスをかぜ薬や鎮咳去痰薬の配合剤の原料とすることもある(かぜ薬基準 1日最大分量:原生薬換算量4g)

  7. 配合される主な漢方処方

    葛根湯,杏蘇散,桂麻各半湯,五虎湯,五積散,小青竜湯,秦芁羗活湯,神秘湯,独活葛根湯,防風通聖散,麻黄湯,麻杏甘石湯,麻杏薏甘湯,薏苡仁湯 等

もっと知りたい

生薬の品質を五感で判断する方法

  • 採取したてのものよりは,やや古く,かつ黄緑色~淡緑色のものが好まれる.
  • 茎が太く,味が渋くて苦く,のち舌を麻痺させるものを良品とする.


その他

  • ひも等で綺麗に砲弾型に束ねられたものを束麻黄または斉麻黄と呼び,屈曲や枝分かれが多く,ばらばらなものを散麻黄と呼ぶ.束麻黄は,散麻黄に比べ良品とされていたが,現在中国からは,束麻黄,散麻黄の状態では輸出されず,刻みの状態で流通している.
  • 古来より文献には「去節」とあるが,刻みの状態であるため.現在ではあまり重要視されていない.
  • エフェドリンには中枢神経興奮作用(覚醒作用,鎮痛作用)に加え,交感神経興奮作用(心拍数増加,発汗作用,気管支拡張作用)があり,咳止め薬や多くのかぜ薬等に含まれているが,世界アンチ・ドーピング機構で禁止薬物の対象とされている.


代表的な成分の構造式

L-ephedrine


d-プソイドエフェドリン